【第61回】新しい日本のキャブコンレイアウト提案をしたジル・ノーブル


それまでキャブコンといえば2×5mのボディ寸法が定番だった。その理由として月極駐車場に入るサイズ、フェリーなどの乗船料金などがあげられていたが、本来のキャンピングカーとしての使い勝手に注目しコンセプトを再構築した。それは2年ほど前にさかのぼる。

新たなコンセプトは、さらなる快適で広い就寝スペースの確保とダイネットの構築による搭乗人数の確保である。そのままではこれらを満たすのは無理で、ベースになるカムロードを利用し最大となる5.2m全長を採用することに決定。その後登場するモデルは、基本的にこのサイズが基準になっている。

バンテック製キャンピングカー ZiL Noble(ジルノーブル) バンテック製キャンピングカー ZiL Noble(ジルノーブル)

何はともあれ、コンセプトを完遂するにはスペースを創出しなければならない。そこで目をつけたのが、キャブとシェルの段差部。通常ここは15cmほどあまり利用されない状態で放置されていることがほとんど。実際には、カムロードではリクライニング可能なスペースとなっている。

このスペースを有効活用し、スライドする新しい台座を設計しそこへシートを設置することで、ダイネットを形成することを可能にしたのだ。それらスライド操作などを行なうときフロントシート背もたれも操作する必要があるが、シェル側からそれができるようにするためのケーブルが増設され、簡単に作業できるよう工夫されている。

バンテック製キャンピングカー ZiL Noble(ジルノーブル) バンテック製キャンピングカー ZiL Noble(ジルノーブル)

ダイネットが全体で20cmほど前方へ移動、それとともに後方が20cm拡大したことにより、最後部にダブルベッドを設置することができた。狭さを感じずにすむ2段ベッドではなく、3段階にスプリングの反発力を調節できるマットを入れ、寝る方向で2つに分割されているおかげで、隣で寝ている人の寝返りが直接伝わらないようにも工夫した。

さらに、上段がない分少しマットの高さを上げ下部外部収納庫スペースを大幅拡大。セパレートエアコンの室外機も問題なく収納できるようにし、昇降性を確保するため、格納式スライドステップを用意し、移動時の安全性も確保した。

バンテック製キャンピングカー ZiL Noble(ジルノーブル)

その就寝スペースには、今やバンテック車には当たり前になりつつあるセパレートエアコンの室内機が装備され、サブバッテリーで4時間程度は駆動できるように。もちろん出力的に、フロントのバンクベッドの空間まで調節できる能力があるが、例えばこのリヤ空間だけをカーテンで仕切って空間容積を減少させれば、その運用エネルギーは減少しサブバッテリーへの負担も激的に軽減させることができるだろう。

装備類はジル・シリーズ同様のフル装備状態で、それら使い勝手は変わらないし最新型パーツの恩恵を感受できる。ただ実際には2人で利用することがほとんどというユーザー層には、ファミリーにも余裕で対応できるこの新しいコンセプトによるレイアウトは、まだ一般的にはあまり浸透していないもののかなり魅力的に映るのではないだろうか。

ショーなどで普通の2段ベッド仕様などと比較することができる場合、可能ならばこのリヤベッドに少し横になってみることを勧める。たったそれだけで、レイアウトの持つコンセプトが理解できるはずだから。

バンテック製キャンピングカー ZiL Noble(ジルノーブル)詳細ページ

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第57回】時代の欲求、愛犬とともにランディで快適なキャンプ旅



キャンピングカーを旅車として選択するユーザーにおいて顕著なのが、ペット同伴の移動をメインに据えその所有率が通常の車より高いことが挙げられる。特に中型犬以上のワンちゃん連れのご家族は驚くべき頻度である。

もちろんそれは“家族”であることも重要なのだが、自由な時間に一緒に旅できることや、ペット同伴による宿泊に自由度が少ない日本の環境が影響していることは間違いないだろう。さらに時代が進み、国産のモーターホーム系が停車時にもエアコンが使えるようになってきた意味合いは、ある意味絶対条件になりつつあるのかもしれない。

バンテック製キャンピングカー CORDE RUNDY(コルド ランディ)

そんな事情が影響してか、バンテックにかなり特異なレイアウトと装備内容で登場して来たのがランディ。正直言えば大ヒットモデルというわけではないが、見る人が見れば“ウゥ~ン”と唸らせる内容がてんこ盛り。

それを実現するため、乗車定員は6名ながら、レイアウトはまるで2人で使用することが前提になっているような趣き。移動時はフロントシート、くつろいでいるときは車両後ろ半分が丸々ラウンジ型ダイニングという大胆なもの。

バンテック製キャンピングカー CORDE RUNDY(コルド ランディ)

フロントシート上にあるバンクベッドは、通常とはかなり違う折りたたみ式ツインベッド仕様。横に寝ている人に気を使うことが少なく、フロントシートからマルチルームやリヤダイニングスペースへの移動がすこぶる楽な移動になるよう設計されている。

バンテック製キャンピングカー CORDE RUNDY(コルド ランディ)

今やペット連れキャンピングカーの定番となりつつあるセパレートエアコンを装備し、移動の食事や休憩時にサブバッテリーでエアコンを3時間以上駆動することができるので、安心して車内に置いていけるのもありがたい機能なはずだ。

また、このエアコンの下スペースは一段高い設定になっていて、キャブとシェルの高さ段差をかなりの床面積で吸収している。その横側面下部にはウインドウが付き、ワンちゃんが外を眺めていられるという嬉しい特典付き。さらにそのスペースは、ちょうどワンちゃんが移動中に中央から前を見るのにいい位置になっているのも見逃せない。

バンテック製キャンピングカー CORDE RUNDY(コルド ランディ)

特筆すべきは、エントランスを開けた目の前のフロアが、マルチルームまでつながる一体型シャワーパン構造になっていて、“土間”と呼ばれるそのスペースのおかげで、散歩から帰ってきてもそのまま上がれるし、靴も履いたままで大丈夫。もちろん水洗いで流せるドレンを装備しているので、通常の使い勝手をスポイルすることがないどころか利便性は高まっていると言える。

万人の目的の最大公約数ではなく、使う目的者のニーズをきっちり拾い上げる、そんなモーターホームがワンオフモデルではなくカタログモデルとして登場してきた意味合いは、ある意味日本のモーターホーム市場の成熟度が高まって来たことを意味しているようだ。

バンテック製キャンピングカー CORDE RUNDY(コルドランディ)

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第47回】全長5mの可能性に挑むコルドバンクス


JB-500に始まるバンテックのコーチビルドキャブコンの歴史は、ジルに引き継がれ、さらに大型化を果たし豪華さも併せ持つモデルへと継続していく。

そんな中、装備はしっかりとしていながらリーズナブルで使いやすいスタンダードモデルの模索が始まる。そして生まれたのが’05年登場のコルドバンクスだ。

バンテック キャンピングカー CORDE BUNKS(コルドバンクス)

機能的には十分でスッキリとして使い易い印象。レイアウトはリヤ常設2段ベッドを持ち、標準的なダイネットを用意する極めて一般的なレイアウトを採用している。この使いやすさは言わずもがなだが、全長5mのキャブコンにあってユーザーのニーズを満たす最大公約数的な作りだったのだろう。

装備についても現在へ続く要素が多く、発電機を搭載できるようにしたり、LPガスの使用を限定し少量のカセットガスによる供給に絞ったりしている。’05年当時はソーラーパネルがまだまだ高価で、サブバッテリーと組み合わせたシステムを構築するより発電機単体の方が安かった、照明を代表とする装備品の電気消費量がまだまだウェートとして大きかった時代でもあった。

バンテック キャンピングカー CORDE BUNKS(コルドバンクス)

ダイネットのほかに、サイドシートがありさらにそれがエントランス前に拡張できるという機構がある。これは、室内でより多くの人数でくつろげるようにする工夫だが、コルドバンクスに限らず全長が限られたモデルでは現在でもこぞって組み込まれる仕組みだ。

バンテック キャンピングカー CORDE BUNKS(コルドバンクス)

収納に関しても気を遣った設計がなされていて、大型バゲッジドアを用意しリヤベッド部を収納庫として利用できるほか、アンダースカート部にも大型ストレージを用意するなど、より多様化するキャンプシーンに対応しようとする工夫が随所に盛り込まれている。

現代の5mスタンダードキャブコンとしては当たり前に思われる内容だが、コルドバンクスが登場した時には割り切り方といい、かなり斬新な構成であったことは間違いない。実際、このコンセプトからの派生モデルが、次の時代に続々と登場してくるのだから。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第1回】最新ZiL520で300km走った


一般的にキャンピングカーの試乗はなかなか機会に恵まれることがなく、気に入ったモデルがあってもいろんな意味での決断ができない人も多いに違いない。もちろん金額もそれなりなので、尻込みしてしまう気持ちは痛いほどわかる。

20160325_1

突然の連絡を受け、夜に車両受け取り。そのまま乗り出してさて印象は…、うわぁ、パノラマビューモニターってすごい便利だな。オプションで俯瞰で見れるのだが、その正確さを確認できるまで面白くてまるでほかの事が頭に入らなかった。

このホームページを見て購入検討などをしているということは、すでにバンテックセールスの車両には相当見たり調べたりという状況の人が多いと思う、というかそう想像している。そこで、カタログや展示車で確認できる装備はひとまず置いておいて、端的に車としての走り具合に焦点を当てて話を進めてみよう。

そもそも自分は、これまでにジルがカムロードをベースとする前からのおそらく全モデル、シリーズを試乗してきている。一番長く乗ったのは、1年以上貸与されていたZiL480だろうか。この480は、ベース車両サイズと全体の大きさ、パワーがうまくバランスしていると感じていたのだが、正直それより一回り以上大きい520サイズではどうなのだろう、そこが判断において一番の注目点になる。

20160325_2

すでにZiLシリーズではお馴染みになったバッテリー駆動もできるルームエアコンは、取り付けと見た目がますますスマートになり、コンロのガスはカセットガス、FF暖房の燃料は走行燃料タンクからと、通常使用時の利便性が極めて高い。

スタートはバンテックセールス埼玉展示場、そこから関越、圏央道、中央道と乗り継ぎ富士周辺までの往復。走った事がある人には分かりやすいが、国道139号線の西湖と本栖湖周辺はそれなりのコーナーが続く道。スタート直後感じたのは、ディーゼルエンジンの変更があったっけ? ということ。イヤそんなことは誰にも聞いていない。さらに、こんなに登坂車線がある所でスムーズだっけ? ロードノイズもどういうわけだか静かに思える。国道に入るともっと違いを感じたのが足周り。もしかしてコレはバンテックお得意のショックアブソーバーとか特製リヤスタビライザーの追加とか?

結果から言えば、エンジンも足回りもどノーマル。ではその現象はどこから生まれてきたのか、それはひとえにバランスである。前後左右重量配分、重心位置その他諸々。そもそも520フルサイズボディは480より当然重くなるのだが、それによる動力性能の落ち込みは思ったほど感じられない。それよりも、落ち着いた挙動と伝わってくる振動などは、明らかに乗りやすく疲れが少ないであろう事が理解できる。手荷物すらほぼ何もない1名乗車のため、実際のキャンプでの運行と違うところもありそうだが、現時点でのバランスの良さが崩れることはそうそうないだろう。リヤオーバーハングもそれなりにあるのに、挙動がロングホイールベースのモーターホームに近く、シリーズ中おそらく一番乗り心地が良い。コーナーでの減速加速もスムーズにこなせ、バランスの良さからその速度差も少なくかなり乗用車的。それが、300kmほど乗って理解できた最新ZiL520の姿である。

・関連リンク

ZiL520  http://www.vantech.jp/lineup/zil520/index.html

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com