【第27回】プロトタイプとして登場するも幻になったデクスター


まず誰も知らないと思われる幻のモデル、それが「デクスター」だ。’00年にプロトタイプとして1台のみ製作され、どうやら海を渡っていて国内にも残っていない、5550×2030×2390mmというボディサイズで5名就寝を可能にし価格が295万円。今ならキャンピングトレーラーをけん引免許で引くのが当たり前の時代になったので受け入れられそうだが、当時としては難易度が非常に高いモデルだった。

欧米では自走式よりトレーラーの方が登録台数は多い。もちろんそれは価格が大きな要因なのだが、日本ではインフラ整備や文化的背景がいまだ揃っていないのが、こういった大きなサイズのキャンピングトレーラーがなかなかユーザー層にアピールしていくのに難しいところでもある。

バンテック キャンピングカー dextor(デクスター)

室内はエントランスを入った正面に常設のダブルサイズベッド、フロント側にかなり大型のダイネットという構成で、いわゆる欧州的な生活のしやすそうなレイアウト。1軸のため、走行時、とくに後進でも取り扱いはよかったのではないかと思われる。機械式慣性ブレーキを採用しているので、けん引車の設定も比較的容易だったはずだ。

想像でしかないが、バンテックはキャンピングカービルダーである条件として、キャンピングトレーラーもしっかり作っている欧州メーカーのスタイルを確立したかったのではないだろうか。

現在バンテックでは災害対策用のトレーラーを製造しているが、そちらはパネル工法で大きさは似ているが関連はない。このデクスターはFRP一体成型のボディであり、そのなかに家具類を建て付けていくと重量がかなり重くなったようだ。

バンテック キャンピングカー dextor(デクスター)

内装は当時の自走式に共通したパーツが多く、ジルの中を見ているようだが、広さという余裕度が違うのがトレーラーならでは。特にキッチンとシャワールーム周りのゆったり感は、長期滞在でストレスを感じることがほとんどないはずだ。

トレーラー引きの筆者としては、この全長とオーバーハングでは日本の環境においてフロント・リアともに最低地上高の問題がいろいろと出そうだと考えてしまうが、プロトタイプからラインナップモデルになっていればきっとそのあたりは解決したに違いない。

乗車定員がないので強度などの制約が緩いのがトレーラーの利点でもあるので、現代の軽量化製造方法を徹底的に採用しつつ、極めてシンプルで低価格、なおかつ十分なサイズのトレーラーとして存在できれば、結構人気が出るのではないかと思われる。何しろ国産であることで、日常のメンテナンスがパーツ入手も含めて相当楽になるはずだから。

現在でも国産でキャンピングトレーラーを製造しているメーカーは数社あるが、本格的に生活できるトレーラーとそのサイズとなると見当たらない。設定を煮詰めて復活したら楽しい選択肢が増えることは間違いないのだが、やはり難しいのだろうか。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第26回】DC12V、AC100V、そしてカセットガスでも駆動する3ウェイタイプの冷蔵庫


車中泊をするなら冷蔵庫があると便利だ。冷えた飲み物や食材を運ぶのはもちろん、旅先で見つけた要冷蔵のお土産を買って帰ることができる。

車内で自炊をしながら旅をしている人ならば、たとえば市場で買った新鮮な魚貝類を保存しておくことができて便利だ。

おいしそうな刺身を見つけたら迷わず購入でき、旅行中の食生活のグレードが上がるので、食にこだわる人にとって冷蔵庫は必需品といえる。

なかにはクーラーボックスで代用している人もいるだろうが、旅が何日も続くとそのたびに氷を買うのは面倒だし、水になった氷も始末しなければならない。

3ウェイ冷蔵庫 RC1602EGCは、庫内容量が33Lあり、2Lのペットボトルを縦に8本収納することができる。フタを閉じればテーブル代わりにもなって便利に使える。
ボディは耐久性の高いスチールキャビネット製。スクエアな形状ででっぱりがないので車にも積み降ろししやすい。

そしてなによりの特徴は、3ウェイ冷蔵庫ということである。キャンプ場などで電源が取れるところはAC100V、車内ではDC12V、そしてアウトドアではカセットガスとシチュエーションに合わせて動力を選べるのが3ウェイ冷蔵庫の強みだ。

電気がなくてもカセットガスで駆動するからいざという災害時にも使える。

本体上部に温度調整のツマミがあり、背面にカセットガスをセットすることができる。定格消費電力は75W(AC100V、DC12V)。カセットガスでは10.5g/hを消費するので、1本でほぼ24時間使用できる。

キャンピングカー用 3ウェイ冷蔵庫 RC1602EGCキャンピングカー用 3ウェイ冷蔵庫 RC1602EGC

ポータブル冷蔵庫
♯162055 3ウェイ冷蔵庫 RC1602EGC
価格:49,680円(税込)
サイズ:500×440×440mm(外寸)
重量:16㎏

 

浅井 佑一
著者:浅井 佑一
キャンピングカー専門誌「オートキャンパー」編集部を経て、現在は旅とキャンピングカーをテーマにしているフリーライター。キャンピングカーで車中泊しながら、全国の道の駅をまわっている。旅の様子は「オートキャンパー」にて連載中。 http://rvtravel.jp

【第25回】シンプルなボディワークで普及版として登場したレオ


ベガやジルの成功を受け、当時のフルサイズ国産キャブコンはますます多機能で充実装備を目指していく方向に動いていった。そして'00年には、ベース車両として安定感のでてきたカムロードをベースに、普及版を狙ったと思われるレオが投入された。

その当時の価格を見てみると、ジルは567万円。ライトキャブコンで格下シャシーのタウンエースベースであるJB-490が448万円。レオは473万円で、サイドオーニング、FF暖房、カセットトイレなど装備群もおごられ、コストパフォーマンスの高いモデルであった。

正直言えば、やはりキャブコン単体価格が500万円を突破していることが「高い」というイメージにつながってしまう時代であり、ある意味販売戦略的な要素が強いモデルだったのかもしれない。何しろ日本はデフレの真っ只中だったのだ。

バンテック キャンピングカー レオ

コストを抑えられたのは、一にも二にもコーチ部ボディーワークとしてそれまでバンテックがJB-500以来こだわっていたFRP成型ではなく、初めてパネル工法を採用したことが大きい。そのため見た目が普通というかいかにも普及版、デザインで頑張って価格が上がることすら回避したであろうと想像できた。

もちろんこの製造方法を採用する背景には、工期の短縮化や製造設備の簡素化が見込まれる。だからこそ世界中で採用され、リーズナブルなモデルが登場してくる手法として採用されているのだ。

バンテック キャンピングカー レオ

ボディサイズは全長5m未満に抑えられてはいるが、車幅はなんと2.08m。レイアウトは当時定番中の定番の、サイドソファのあるダイネットという構成。ジルとの違いは、左右が反転していることで、使い勝手という点では好みによるところが大きいだろう。

室内に入ると、ボディ形状や幅からくるものか、かなり広さを感じた。バンクベッドのヘッドクリアランスがたっぷりなのも、実用性で言えば相当優位。大型の清水タンクや排水タンクの装備なども含め、外観デザインよりも使い勝手を優先したことは明らかだ。

バンテック キャンピングカー レオ

バンクベッドは前部が持ち上がっていることもあって本当に広い。’02年にモデルチェンジしたときにはルーフがフロントにスラントする形状に変更され、そのイメージが若干変わった。そのほかは基本的に同じだ。さらにモデルチェンジと同時にバンクスが追加された。

このバンクスというグレードは現在発売されているモデルにも登場する名前だが、大雑把に言えば、さらに普及版を目指し、装備を簡略化したモデル。当然その分車両重量も軽くなるので、当時のノンターボディーゼルエンジンでも、軽量に作りやすいパネル工法と相まって、エンジンの非力さがストレスになることが避けられた。ちなみに当時の5Lエンジンは、排気量2985㏄、出力91馬力、トルク19.5㎏mであった。

パネル工法はその後、アトムにも採用されていくのだが、現在のキャブコンのラインナップには存在しておらず、今後ふたたび採用されるかどうかは分からない。今になってみれば、かなり思い切った模索だったのだろうと思う。そして販売期間が短かったのは、ユーザー層がバンテックらしいデザインを望んだ結果なのかもしれない。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第24回】ポンピングして空気を圧縮 簡易水洗式のポータブルトイレ


たとえば車中泊をしていて、夜中にトイレに行きたくなったとき。そして雨が降っているとき。冬場で寒いとき。いずれも車から出たくないというシチュエーションだが、そんなときにトイレが車内にあると便利だ。

日本のキャンピングカーのトイレは大きく分けて2タイプあり、ひとつが国産キャブコンなどに装備されている車内に固定されたカセットトイレ。

もうひとつがバンコンをはじめとしてミニバンでも積めるポータブルタイプだ。もちろんキャブコンに積んで使ってもかまわない。

ポータブルタイプは上部に清水タンク、下部に汚水タンクがあって上下に2分割できる構造になっている。あらかじめ清水タンクには便器への汚れ付着防止に洗浄剤、汚物タンクには消臭材を投入して使う。

今回紹介するポータブルトイレは上部の清水タンクに水を入れ、ハンドポンプをポンピングすることで空気を圧縮。タンクの中の水を高水圧で流すことができる簡易水洗タイプだ。清水タンクの容量は8.7Lあって、最大で26回の水洗ができる。

下部の汚物タンクは容量9.8L。溜まった汚物は家のトイレなどに流して処理するのだがその際に汚物タンクの排出口の筒を外側に向けることができるので、ハネ返りなしで処理ができる。

サニポッティー972よりも汚物タンクの大きなサニポッティー976という商品もあり、こちらは汚水タンクがほぼ倍の18.9Lある。大きなタンクのほうが、汚物を捨てる回数は少なくなるので便利だが、その反面、タンクが重たくなるので、持ち運びが大変になる。小さなタンクでマメに処理をするというのも選択肢のひとつだ。

キャンピングカー用ポータブルトイレ サニポッティー972 9.8L

ポータブルトイレ 144064 サニポッティー972
価格:16,200円(税込)

浅井 佑一
著者:浅井 佑一
キャンピングカー専門誌「オートキャンパー」編集部を経て、現在は旅とキャンピングカーをテーマにしているフリーライター。キャンピングカーで車中泊しながら、全国の道の駅をまわっている。旅の様子は「オートキャンパー」にて連載中。 http://rvtravel.jp

【第23回】パワーと余裕を求めエルフベースの快走モデル登場


カムロードが登場し、それをベースにしたジルも大人気モデルとなったが、当時のカムロードはノンターボのディーゼルエンジンであり、登坂車線を走らざるをえないこともままあった。走りという意味ではかなりストレスが溜まっていたのかも知れない。そんな不満を晴らすように’99年には許容架重重量が大きないすゞ・エルフをベースにしたクルーズが登場した。

バンテック キャンピングカー ジルクルーズ 外観

リヤダブルタイヤによる架重に対する余裕があり、キャンプグッズを満載してもへこたれない。重量物となる水を満載していても、不整路面をものともしないのには驚かされた。パワーがあるので乗り心地と走破性のどちらを優先するかが悩ましい時代に突入したのを覚えている。

現行モデルにもジルクルーズは存在するが、ベースになっている520の前後左右バランスがよく、スムーズな走りはそのままに、さらにパワフルでしっかりした車体感を持つモデルに昇華され、乗り心地といった面でもかなり改善されたように思える。

バンテック キャンピングカー ジルクルーズ 内装

室内はジル同様、引き出して広々使える巨大なバンクベッドを持ち、右サイドソファというレイアウトもそのまま継承。装備的にも大きな違いはなく、車体そのものに余裕ができた分、オプションなどで重量を気にせず装着できるといったメリットが際立った。

バンテック キャンピングカー ジルクルーズ 外観

ダイネット空間は、ジル同様全面ベッド展開が可能。マットの境目のフラット感も高く、バンクと合わせると余裕で大家族に対応できた。対面ダイネットを展開せず、掘りごたつ状態で利用するのがユーザー層に定着したのもこの頃である。

バンテック キャンピングカー ジルクルーズ 内装

天井を見てみると、現行にも続く曲線を取り込んだ意匠が見て取れる。まだ間接照明や、LEDライトは未装備。今だと当たり前のように装着される高性能ルーフベンチレーターがダイネット上部にないあたりに、価格と快適性をユーザー側が計りかねているのを感じる。

現代では、ベンチレーターはおろかセパレートエアコンを装備するのがこのクラスでは当たり前になってきて、時代差を感じる。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com