‘00年に初代が登場し、’08年に5代目、SRXタイプも勘定すれば6代目となるアトムの最終型は型番が307となり、タイプRというモデルが登場した。レイアウトプランや装備がめまぐるしく変化したモデルではあるが、ある意味タイプRが集大成ともいえる。
キャンピングシェルは“シーダ”と酷似していて、現在見てもそれほどの時代格差は感じられない。間違いなく原型と言っていいだろう。しかしその内容は、シーダとは一線を画すコンセプトを持っていたモデルである。
基本的にファミリータイプであるため、乗車定員と就寝定員をたっぷりとるというコンセプトがあり、ジル譲りの広いラウンジを作れる左ダイネット空間を持つのが最大の特徴。ただ、ボディサイズ的にマルチルームを設けるなどは用意していない。
そのためトイレは常設ではなく、徹底して居住空間部分に余裕を持たせるレイアウトになっている。テーブルの広さはボディサイズからは想像できないもので、このあたりは格上の空間演出を行なっているのが理解できる。ソファ背もたれも使い、通路を埋めるように設置し多人数がゆっくりくつろげるのは、ファミリーには重宝するだろう。
ダイネットとバンクベッドに思い切って空間を割いたキャンピングシェルのため、当然寸法的に無理が生じる。その典型がキッチンスペースであり、カウンタートップの下が空間処理を行うなどしスペースを稼ぐ苦肉の策も取り入られた。
実際にこのキッチンの前に立ってみると、ダイネットまでの距離も考えられていて使い勝手がいい。ただし収納スペースということでは、やはり物足りなさを感じてしまうのは事実である。
一番“らしさ”を主張しているのはリヤに設置されたクローゼット。このクローゼットは前後にスライド伸長する特殊な作りで、伸ばした状態でポータブルトイレを設置し利用することができるが、かなり苦労したギミックのようだ。フルベッドの状態でもその利用が可能なのは、よく煮詰められた設計だと感心したものである。
実は、この折りたたみトイレスペースは、機構こそ違うものの現在のシーダにも受け継がれ、大きなキャビネットスペースにポータブルトイレを収納している。ライトキャブコンという限られた空間ではあっても、やはりトイレがあったほうがキャンピングカーとして有利であるということを理解し、設計に取り込まれたはずである。
現在でもこのカテゴリーのライトキャブコンモデルの人気は高く、中古市場でも売れ筋の商品。いろんな意味で、日本の環境にあった使い勝手のいいキャンピングカーと言えるのだろう。