【第261回】ニューカマーCC1 その2 内装装備


 前回の私の第258回コラムでCC1の外観についてお届けしたが、今回は内装についてである。 レイアウトはダイネットを持ちリヤ常設2段ベッド、マルチルーム的なユーティリティスペースとオーソドックス。バンクベッドは無い状態だが、これは日本でも割と増えてきたスタイル。これにより全高を抑えているモデルが認知され始めたのだ。

 サードシートは3点式シートベルトを持つ。位置は確認できなかったが、置いてあるとしたら このシートかセカンドシート下に合計200Ah相当のリン酸鉄リチウムイオン電池が置かれる。そのサブバッテリーはオリジナルプログラムのバッテリー・マネージメント・システムで制御され、 170Aの大電流充電が可能のようだ。 日常使いの感じとしては、電気を普通に使った状態から4時間で充電が終了する感じ。そのエネルギー源は、130Aのオルタネーターと80Aの充電器によるもの。独自のシステム開発には時間とお金をだいぶ注ぎ込んだようで、温度センサーも付いて制御されるのは当然、そもそもバッテリーセルそのものが内部密度が低いものを採用しているため、発熱が少ないのが特徴のようだ。ただその分外形寸法は多少大きめとのこと。

 冷蔵庫は90lと大きめで電子レンジはインバーターを介して使用でき、たっぷりのリチウムイオンバッテリーの恩恵を最大限に活用できる。

 初見で驚いたのは、ボディカットモデルで本来はフロアが低いはずなのに想像以上に高かったこと。なんとその差は、60mmの断熱をフロアに仕込んだからという。エントランスドアにはインナーステップタイプが採用されているので、車体外側にステップを用意しなくても乗り降りが楽なのは助かる。

 現代のキャブコンでは、FF暖房が組まれるのは当たり前で、快適なエアコン環境があるかどうかが商品力を高める。CC1には走行時リヤエアコンがバンク部に移設され、キャビネット内に組み込み直されている。走行時はこれが基本になる。

 走行時以外はと言えば、製造するファーストカスタムが自ら扱う小型タイプがキャビネット内に室内機を組み込み、その存在が「私はエアコンです」というような主張なく給排気口のみが開いていてスッキリ収まっている。電源はDC12V仕様のため、インバーターによる電源エネルギーロスもなくダイレクトにサブバッテリーから駆動でき、出力で言えば2700BTU。日本的に計算すると680kcalということになる。家庭用エアコンの最小タイプと比較すると1/3だが、室内容積を考えると停車中の使用なので十分対応できるはずだ。

 そして何より驚くのは、このエアコンは自動車専用に開発されたものであり当然振動や塩害対策済み。室外機は後部フロア下に配置されているが、ファンは水平置き。この辺りの状況も確認してみたが、すでにテスト済みとのこと。当然ではあるが、消費電力的にもサブバッテリーへ与えるダメージは少ない。 総合的に見ると、スタイルの斬新さがかなり目立ち、レイアウトはオーソドックスでありながら最先端技術をふんだんに取り込んだモデル、という印象。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第258回】ニューカマーCC1 その1外観概要


 2月から延期されついに開催されたジャパン・キャンピングカー・ショー2021、4月2日バンテックブースに、ブランニューなこれまでにないモデルが展示された。ベース車両は日産NV350でBピラーの後ろをボディカットしたキャブコンで、エントランスドアはなんとスライドドア。 正直いってバンテックの既存のキャブコンとはまったく毛色の違う、ある意味展示ブースで異彩を放っていた。

 名称はアストラーレCC1、製造はバンテックかと思いきや復活したファーストカスタム。知る人ぞ知る佐藤和秋社長率いる秋田の職人集団。その作品がバンテックで取扱販売されることになったのだ。

 とにかく目を見張るのは、ボディラインの綺麗な処理。目を凝らしてみるとわかるのだが、デザイン的に面と面が付き合わせになる部分でFRPシェルを接合しているため、一体成形にも見えるし余分な出っ張りや突起が皆無で、現代的な乗用車の趣なのである。

 ボディワークはお家芸であるスペース鋼管フレームによるもので、従来通り外皮FRPは強度部品ではなくいわゆる幌をかけたような構造。過去の製造例で考えると、フレームと外皮の間は相当の空間が作られ断熱と防音に役に立つ空間がたっぷり用意されているはずだ。

 そしてバゲッジドアなども既存品を装着するのではなく、デザインにあわせてオリジナルで作成し、オリジナルヒンジを内包して外観デザインに影響しないようになっており、閉めた時のツライチもピタッと合わさって出っ張りは皆無。いわゆる乗用車のドアやトランクのよう。 こういったデザイン処理を施されたキャンピングカー、キャブコンは日本ではかなり珍しく、 他とは違う持つ喜び的な部分をそそるのは間違いなさそう。

 嬉しいのは純正のスライドドア機構を利用し設置し直したエントランスドアの機構で、電動スライドでは無いもののオートロックやクローザーはそのまま利用できる。こんなところも乗用車的といえる。 このエントランスドア、パーツこそ純正品流用だが耐荷重2トンをかけた状況で設計されていて、安全面にも十分な配慮がされているのは間違いない。 そして現代のキャブコンは、日本においては旅のツールとして利用されることがもっとも多い。 そう乗用車的なのだ。だが車幅がそれなりにあるキャブコンの場合、サービスエリアの駐車スペースだと隣のクルマとエントランスドアの開閉が干渉することがままあるが、スライドドアだとそういった不安も激減する。ステップも内包式なので、さらに隣との気遣いが少なくてすむと言った利点もある。ザッと外観を見てみたが、次回は内装と装備の特長について説明してみようと思う。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第105回】工夫で広がるタープ下快適空間


キャンピングカー、特にキャブコンを購入するとサイドオーニングが付いていることがほとんどだ。それは便利な装備で、本来の日よけとしてだけでなく、簡易的な雨よけの屋根としても働く。これが、クランク・ハンドル操作だけで出し入れ出来るのだから、キャンプの必需品と言っても過言ではないだろう。何しろ、現地到着した時最初に作業にかかる装備であり、自分的には外部電源より先にとりかかる。

確かに便利なのではあるが、国産キャブコンクラスだとそのサイズは3.5mほど。パラッと雨が来たという程度なら大丈夫だが、少し強めになる、または横に流れるという場合には、しのげるスペースが激減。また、サイドオーニングはその構造上、風にあおられることにことのほか弱い。

こうしたウィークポイントがあるにはあり、それを解消するためのグッズ類も豊富に発売されている。もちろんそういったモノを利用するのがマッチングが良く、実用性も向上する。

そういったものがない場合は、出先に見つけるホームセンターなどに行くと、いろいろ代用できるものが見つかる。特におすすめなのは、防炎シートとメッシュのシート。これらをサイドオーニングにくくりつけペグダウンすることにより、雨の浸入を防ぎ、風の影響を激減させることができるのだ。ペグダウンすることで、サイドオーニングを専用のパーツでタイダウンさせるのに似た効果があるのも見逃せない。

雨や、寒い時期の風を止めるのに、透明シートもいい。サイズとしては、高さで使う辺が1.8m、幅で2.7mや3.6mが使いやすいと思う。いずれにしても、簡易として固定するのに最低でも強力な撚ったビニール・ロープは必要なはずだ。

サイドオーニング下の空間を、天候に左右されずにキッチリ使えるようになると、やはりさらにその空間を広げたくなるのがヒトの性。こんな時にも防炎シートは役に立つが、さらにポールも必要になってくる。ホームセンターには、雨にも錆びず強度があるステンレスの延長物干し竿というものが必ずある。これを利用すれば、かなりの状況に対応できるだろう。

この辺りからは経験がモノを言うタープワークになるが、無段階で長さ調節できるのは都合がよく、綺麗にしかもカッコよく張れるとキャンプ場でチョット注目されることは間違いなし。

こんな事も、キャンピングカーで遊びに出た時の遊びの1つになってしまうのが、もしかしたらキャンピングカーならではなのかも知れない。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第101回】全長6.7m、ついに始動した国産大型モーターホームの概要


日本には優れたキャンピングカー専用シャシーがあり、それはカムロードと呼ばれキャンピングカー、特に国産のキャブコンというスタイルで人気を得ているのは承知の通り。ただこのシャシーは架装重量が1.5トン積みであり、ホイールベースの短さからくる最大寸法とボリュームが現在のキャブコンの形状でイッパイだ。

そのサイズ的・重量的問題を克服するため、過去にはトヨタ・グランドハイエースやベンツ・スプリンターなどが次世代モーターホームのキャンピングカー用シャシーとして登場したものの、排ガス規制やそのほかの問題で現在は姿を消してしまっている。

そんな状況の中かなり前からバンテックが目をつけていたのが、フィアット・デュカトである。この車は、今やヨーロッパにおけるキャンピングカーシャシーとして独り勝ちの様子を見せているくらい普及しているもので、日本で国産モーターホームを作る場合にもサイズ的に適したものになることは明らかだった。

‘18年のジャパンキャンピングカーショーにおいて特設壇上に設置されたのはV670と銘打たれた、マイクロバスベースセミフルコンのベガの後継車にあたるモデルであり、明らかに今後のバンテックラインナップのフラッグシップになるモデルである。

その開発コンセプトは存在感&調和だといい、例えば乗用車で言えば「いつかはクラウン」のようなワンランク上の製品、ステータスが上がって乗る人のモチベーションも上がる、そんな存在感を感じるモノを追求したようだ。そのこだわりは、後ろ回りの灯火類やバゲッジドアの作製などを見ると良く分かる。

またデザイナー的には、ヨーロッパやアジアでも勝負できるものであることを目指しているところがあり、インテリアには和(日本)テイストを盛り込み、国内で作り上げることに主眼を置いている。意匠、仕上げ、品質、それらすべてが融合し、美しさや存在感があり、なお日本独自のテイストが周囲と一致し、調和する。現代の日本における工業製品の共通する価値観なのではないか、それが世界で残っていく製品作りなのではないかとも語っていた。

シャシーを含めデザインを優先した結果こともあり、室内容積は車体の割にけして大きくはないが、室内レイアウトや家具でそれを感じさせない。外装に関しても、他のモデルで標準装備されていることもあるソーラーパネルやサイドオーニングの装備は、ユーザーに選択肢を提供するという考えで、オプション装備に回された。

また発表されたモデルのサンプルレイアウトではプルダンベッドの装備がないが、フロントシート回転対座機能を生かした「日本ならではのファミリー仕様」ということで6名でくつろげるリビングスペースの開発に重点を置くという。

外観的ボディーワークは、すでに完成しているFRPシェルは変更されないものの、内装は完成車とは大きく違って発売されるであろうことは分かった。そこで問題になるのはシャシーである。

フィアットは1年前デュカトの日本へのバンタイプの発売を表明したが、結果的には現時点で実現できていない。そんなこともありフィアット系列のシャシーと思われている部分がそこここで聞こえているが、実はそうではない。

下に潜って見るとすぐ理解できるのだが、キャブ直後で断ち切られたシャシーには上下様々な高さで延長シャシーを設定できる俗に言う「引きずりシャシー」形状であること、そもそも電着ペイントではなくドブ漬け亜鉛メッキ製であること、このことから導き出される答えは欧州・北米でも有名なアルコ社のものであることである。実際、このシャシーは今後車検証の車体番号がアルコのものになると予想される。

GVWR(最大車体総重量)の設定はなんと4500kgと大きめのものが現時点ではチョイスされ、ホイールベースは4000mm。足周りは3段階の中からこの設定が選ばれ、重量配分を事前に計算し、考慮したうえでホイールベースも決定された。フロア高が最上部に設定されているのも、ドロップダウンした状態での利点が、デザイン的にも、機能的にもV670において見出せなかったからである。

これらの寸法やキャパシティを見るだけでも、カムロードベースでは実現し得ない別次元の国産モーターホームを作り上げられることが理解できるはずだ。

最後部はドロップダウンされ、バゲッジの収納力をタップリ確保している。トレッドは極端に拡大することなく車幅では2.2~2.3mにおさえ、日本のワダチでも走行しやすいものとしている。

そもそもデュカトは世界保証されている車両であるが、それは基本的に正規輸入されている場合。そのためバンテックではこの車両を導入するにあたり、まずメンテナンスで一番最初に必要になる高額のダイアグテスターを多数導入し、取扱いディーラーへの貸し出し・勉強会を念頭において現在作業中。パーツにおいてはストックしバンテックから配布する体制を準備中。

この手法は、過去にバンテックがヒュンダイ・SRXを独自に輸入しベース車両として導入したものと同様でありそのノウハウもある。車両保証という点では2年を予定していて、足周りやエンジンなどの重要部品は5年か総走行距離での設定にしようと模索中だ。

最終的にはバンテック自ら排ガスやブレーキのテストを行い、3.5トン未満の車両総重量で完成車を作る予定だということなので、車体そのものも含め相当に余裕のあるモーターホームに仕上がることは明白だ。

いまだ最終形は発表されてはいないものの、新機軸として車両を集中コントロールできるコンピューターシステムや、新しい冷房の方法なども採用される見込み。これからも開発状況から目が離せないのはいうまでもない。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第97回】国産キャブコンの可能性を高めたノーブルシート


国産キャンピングカー、モーターホームの主流はカムロードをベースにしたモデルといって間違いはない。カムロードはキャンピングカー専用シャシーだけありその利点は数知れないが、普通に作るとどうしても煮詰めきれない部分があった。

その1つが、運転席直後のキャブ段差部分のスペースを有効に活かしきれないこと。さらに、構造的にキャンプ中にフロントシート部分のスペースもうまく利用できないということも起こってしまっていた。

そういった問題を解決するために編み出されたのがノーブルシートで、走行時には折りたたんでコンパクトなシートになり、キャンプ中にはフロントシートを前に倒すことによって出来るスペースに前方スライド、足元も広々としたリクライニングソファとして利用できるようにした。

もちろんそれら操作は、キャンピングシェル側からすべて簡単に行なえるようフロントシートリクライニングレバーを拡張し、バンク下に新たなケーブルが増設されているので、たとえ雨の日であっても外に出る必要もなく濡れることなくシートアレンジを完了することができる。

またこのセカンドシートになる部分は、フロントシート側からも折りたたみ作業ができるように設計されているので、移動するときにサッと片付けることもでき、キャンプ・運転時での利用のしやすさに十分配慮されているのである。

極論を言えばこの機能は、限られたキャブコンのスペースを最大限有効活用させる、とにかくリヤに位置する固定ベッドを広く保ちたいというレイアウト上の目的から生み出されたアイデア。おかげで、寝心地の良いクイーンサイズのベッドが設けられたわけだが、ベッドマットをわざわざ縦方向にセパレート化し横に寝ている人の寝返りの影響が出なくしたり、徹底的に寝心地にこだわったスプリング機構を組み込んでいるのも、ノーブルがこだわりを見せている部分でもあるのだ。

そして注目すべき点は、バンクベッドとの位置関係である。通常バンクベッドは就寝定員を確保するという点から、キャンピングシェル後方側へグッと延長させ利用する機構が取られることが多い。しかしノーブルの場合はすでにリヤに広大な就寝スペースがあるためそういったことをあえて行なう必要が少ない。

結果として、バンクベッドで誰かが就寝中であっても、前方にスライドし設置したノーブルシートで普通に座ってくつろげるヘッドクリアランスが確保されている。この使い勝手は少し長めのキャンプをすると有り難さを実感すると思う。なにしろ、ベッド状態のままのバンクベッドであっても手間なくそのまま移動もできるしくつろぐこともできるのだから。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com