【第287回】新型カムロードに見る今後のキャブコン事情


‘21年秋新型カムロードがデリバリーを開始し、’22年2月、国内最大のジャパンキャンピング カーショーにおいて、キャブコンメーカーのそれら新型がそろって展示された。バンテックにお いても全車種新型になるが、大型のモデルチェンジではなく新シャシーへの既存モデルのキャンピ ングシェル適合が主な変化。この辺りはほとんどのキャブコンメーカーが同様の状況である。 そのため、一般的に目につくのは多くの価格上昇ではないだろうか。ではそのカラクリをまず は紐解いてみよう。 この数年前まで、カムロードベースキャブコンでスタンダードだったのは、ガソリン車のシングルタイヤだった。当時からディーゼル車は存在していたが、価格差50万円はなかなか受け入れられなかった。しかし明らかにガソリン車よりパワフル、そしてセパレートエアコン装備の常識化の波の中徐々にディーゼル車はシェアを高め、新規登録はほぼディーゼル車に変化した。しかしパワフルになった分装備も重量化し、それに対応するためリヤダブルタイヤを装備したカムロードが、約20万円高で投入される。残念ながらFRの2駆モデルのみ、4駆が有ればさらに 20万円程高額だったろう。 そして今回のモデルチェンジで、リヤワイドモデルのガソリン車とシングルタイヤモデルは無くなり、排ガス規制に適合したディーゼルエンジンに6AT、さらに数々の安全装備を装着し2駆で80万円程価格上昇した。こう見てみると、わずか数年で最廉価設定でも150万円程ベース車両価格が上がった計算。そのため、どのキャブコンメーカーも、普及版、スタンダードモデル、そういったものが軒並みほぼ900万円前後に設定されている。

価格上昇とともに新型カムロードで目につくのは、重量増へ向けた対処の仕方。バンテックの コルドやリーブスで見ると、清水タンク51l、排水タンク70lが飲料水ポリタンクと別に固定で 標準設定されているのだ。このうち清水タンクはそのまま車両総重量の中に含まれる重量増である。 これまでカムロードベースは常に重量との戦いで、軽量化することに心血を注いできた歴史に反する所業だが、それは新型カムロードシャシーが排ガス規制に適合するために車両総重量で3.5トン以上が必要だからである。 もちろん重量増に対応する耐荷重性能も向上しているのだが、現行免許の普通車で新規取得した人では運転できない車重領域になってしまった。

普及版ともいえるコルドとリーブスのサードシート下には51l固定の清水タンクが設置され、そのボディ側面には吸水口が新たに設置された。元々フル装備状態で重量のあったジルシリーズに は、こういった大きく重量増になる追加装備はされていない。

ボディリヤオーバーハング下、コルドは左リーブスは右に排水用グレータンクが設置される。排水量は71l。

車両右側にタンク給油口のほか、新たにアドブルータンクが設置されたので、80lの燃料タンク容量が60lに縮少。タンク脇に小物を入れられる棚が用意されているのは、燃料補給時に使う手袋やウエスなどの収納にかなり便利。という具合が新型カムロード投入による現象であるが、ショーでは価格の高さに驚く声が来場 者から多く聞かれたように思えるも、正常進化であったことが分かるかと思う。 またカムロードでは少数派にはなるが、リヤワイドではないいわゆるナローサイズでリヤダブルの2000ccガソリン車は暫定的に残されている。バンテックで言えばジル・スキップ480がそのシャシー適合モデルであるが、現在モデルの新規製造はなく今後のニューモデルのアナウンスもされてはいない。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第77回】キャンピングカーの使い勝手を向上させるセキュリティ集中ドアロック


キャンピングカーをそれまで乗ったことがない人にとっては、鍵についてのキャンピングカーを取り巻く状況はさすがに知れ渡っていない。世の中に出回る多くのキャンピングカーは、乗用車では当たり前の集中ドアロックが付いていなかったり、外部バゲッジドアの鍵がそれぞれ違っていて、たくさんの鍵が必要になるなど様々なことがあり得るのだ。

それでは不便さがつのるので、バンテックのキャブコンではエントランスドアをセキュリティ集中ドアロックとし、最も開け閉めする可能性の多い部分で激的に使い勝手を高めている。

さて、そもそも乗用車には今や当たり前の集中ドアロックとは何かと言えば、乗降用のドア全部とトランクやリヤゲートのキーロックがリモコンで施錠開錠が行なえるというもの。さらに開錠していずれのドアも開けなかった場合、大抵30秒ほどで再度ドアロックが全てに施錠されるという仕組みになっている。便利であることは間違いない。

キャブコンにおいては、この場合トヨタ・カムロードを指すのだが、ベース車両のリモコンドアロックは乗用車同様のシステムが組み込まれる。いわゆるフロントシートの両側ドアがそれにあたる。

多くのユーザーはさらに便利に乗降したいと考え、エントランスドアにもリモコン開閉の、アクチュエーターと呼ばれるシステムなどをベース車両のロックに連動して動くよう組み込むことが多いのだが、これは単純に施錠開錠だけができるもので、ベース車両のドア開閉とは連動しないことがほとんど。

この時何が起こるかといえば、まずロックされているキャンピングカーがあったとしてそれをリモコンで開錠。エントランスドアから乗り込んでサッと用を済ませエントランスドアを閉めて降車する。ところがこの状態ではエントランスドアの開閉はベース車両のシステムでは開閉を認知していないので、大体30秒ほどでエントランスドアも含めロックされてしまう。この状態に陥ったとき車内にリモコンを忘れていると、インロックされ大変なことになってしまうというわけ。

そこでバンテックのキャブコンでは、エントランスドアの開閉もベース車両のフロントドア2枚同様開閉をシステムに認識させることにより、上記のようにロック解除した場合にエントランスドアからの乗降があったら自動でロックがかかることがないようになっているのだ。乗用車からみれば当たり前のシステムなのだが、ちょっと特殊なキャンピングカーのエントランスのロックシステムにとってはかなり導入には難しい部分があったりもするのである。

余談だが、2重ロックなどを持つエントランスドアが多く、その鍵の材質上の問題から鍵そのものの磨耗や破損が意外と起きやすいウィークポイントがあるのだが、これは何十年にもわたって改善されることがない。その理由は未だ不明ではあるが、現物の鍵ではなく安心してリモコンで施錠解錠できるということは、脆弱な鍵を曲げたり折ってしまったりというリスクを極力避けられるという点でも、バンテックが採用するセキュリティ集中ドアロックは有効な手段なのだ。

関連リンク:後悔しないキャンピングカー選び

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著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第75回】同乗者の安全を確保するリライアンスシート


キャンピングカーといえど、基本は車。走行時は通常前向きに着座し、その全員がシートベルトをしていることが求められている。もちろんこの場合、前向きシートは3点式シートベルトが基本であり、国交省発表でも非着用時の致死率は着用時と比べ14.5倍となっているので重要な項目である。

バンテックが採用するリライアンスシートは、平成28年に施行された新安全基準をクリアしたシートフレームをすべての前向き座席に標準装備。ISOFIXではないがチャイルドシートの装着も可能で、乗る人を守るという取り組みが平成24年からなされている。

キャンピングカーの場合、着座するシートはベッド展開することも多く、この安全基準とどう折り合いをつけるかは設計段階でかなりの苦労が強いられるところ。

新基準ができた後、乗用車では運転席だけではなく助手席、リヤシートにもシートベルトリマインダーという警報装置を付けることが義務化されているが、キャンピングカーのカテゴリーにおいてはトラックやバス同様にフロントシートのみで保安基準を満たす。さらに、後ろ向きシートや横向きの場合はシートベルトの構成も2点式でよかったりする。

このおかげで、なんとかベッド展開を含めキャンピングカーらしいシート構成が可能になっている。何しろ“らしい”シートが使えないと、キャンピングカー最大の利点である快適な寝心地を実現することができないので、どこのメーカーも頭を悩ませていたのである。

また平成28年の警視庁とJAFの調べによると、フロントシートのシートベルト着用状況は一般道路・高速道路を問わず94%を超えているものの、後部座席での一般道路でのシートベルト着用率はわずか38%前後と非常に低い水準。

キャンピングカーは大事な家族を乗せ楽しい時間を一緒に共有するための道具なので、激しい運転をすることはないとしても、やはり後部座席でもきっちり3点式シートベルトをする習慣を家族全員で身に付けたいものである。

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【第73回】安全性と断熱性を兼ね備えるアクリル2重窓


キャンピングカー、特にキャブコンバージョンのようにほぼ全体的に架装されているモデルでは、ガラスとアクリルの2タイプのウインドウが既製品として存在する。大雑把にみると、北米系モデルはガラスで欧州系がアクリルと分けられる。

それぞれの特徴は、ガラスは透明度の高さと平滑性の高さからくる見た目の歪みがないこと、素材としての長期にわたる不変性だ。アクリルはその素材が持つ強度の高さと割れた場合飛散しないこと、断熱性そのものがガラスよりも高いことである。

近年のモデルでは、ガラスでも一般家庭のような2重ガラスタイプが増え、断熱性が高いものも増えてきているが、フレームはアルミなどのままでありいまだ結露しやすいと言える。バンテックのキャブコンにおいては、ほぼ全てのモデルがアクリル2重窓を採用している。

これまで長い間一般的だったタイプは、アクリル板がもなか状に2重で貼り合わされていて、素材そのものの断熱性の高さだけでなく断熱層を設けることにより、さらに熱の伝わり方を防止しほとんど結露しないよう工夫されている。

現在人気があるのはウインドウが裏表逆になった様な構造で、外表面がボディ面とフラットな構成になるタイプ。それだけでだいぶ車がスタイリッシュに見える。

通常の利用において、室内外温度差による結露はほぼしないといっていいが、経年変化により2枚のアクリル成型板の接着が弱くなってしまったような場合、内側が湿気で曇ってしまうことがある。こうなってしまった場合はほとんど対応策がない。

アクリル2重窓の最大手というか、そのほとんどのシェアを持っているのがドメティック傘下のザイツという専業メーカーであり、エントランスドアなども手掛けている。安全性は十分考慮されていて、欧州の自動車用パーツの規格に合致しEマークが付いていて、これは乗車する車のウインドウとして利用できることを意味している。

現地説明を受けてみると、アクリルという素材のためその性能が問題なく発揮されるのは10年ほどで、それ以上の期間では紫外線の影響などにより多少の変形や白濁などが起こるという。

ただしメンテナンス方法もしっかり確立していて、それを行うかどうかでかなり差が出るとも。もちろん、バンテックではウインドウのメンテナンスというか研磨剤や補修パーツなども用意されているので、長い期間使用することは十分に可能だ。

アクリルウインドウは取り付けフレームがプラスチックで作られていることもあり、窓全体が外気による熱の伝わる影響を室内に出しにくい。さらに内側のフレームはケース内にロールシェードと網戸が内装され、ロールシェードは裏側がアルミシートの蒸着により赤外線の遮断を行ないより断熱性が高いものになっている。

さらに最近の傾向では、ロールではなくブラインドに見えるデザインのものが欧州では増えてきて、より断熱性と防音がしっかりとしてきている。構造は折りたたみ式の筒が繋がった状態で、そのシートもアルミを挟んだ多層構造で空気層を作り出すことによりそれを実現している。

このように、アクリル2重窓は今後も安全性と機能性の向上がまだまだ続けられる、キャンピングカーに適したパーツであると言えそうだ。

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【第71回】Comfort & Safetyというボディの概念


キャブコンのようにキャンピングシェルを架装するスタイルには、現在大きく分けて2つの工法が採用される。バンテック社の場合は、継ぎ目のない一体成型FRP製ボディを採用している。この工法による利点は、衝突時の衝撃を拡散し乗員への影響を最小限に抑えること。また弾力性に富み、素材とコア構造による断熱性の高さも考慮されている。

もう1つはパネル工法と呼ばれ、アルミやFRPの表面材と内装材の間を断熱材と骨格で埋めた、高剛性で歪みが出にくいパネルを天井や床、壁面に使用して組み立てる工法がある。安全性は乗車する車にとって最も大事なことだが、FRP一体成型のデメリットも記しておくと、その形状を作り出すためにはある程度の材料の使用量が必要であり、その分重量がかさむという点があると一般的には言われている。

ではなぜ一体成型を採用するのか? 見た目のデザインの自由度の高さや日本における雨水侵入に対して強いなどのメリットもいろいろあるのだが、ちょっと例え話がズレるかもしれないが説明してみよう。

飛行機の世界で超初期のまだなかなか地上から人の足が浮き上らなかった時代、リリエンタールという人が鳥の構造を真似た羽根によってかなりいいところまでいっていた。ほぼ滑空していたその機体ではあるが、形状は鳥同様1枚羽根。当時の素材のことも原因ではあるものの、強度を確保することがなかなかできず、滑空中に折れて崩壊することも多くケガを負うこともあったようである。

これは機械と同様な高剛性的な考えで作られ、飛ぶためには軽量化が絶対条件でギリギリまで重量=材料=強度が削られ、羽根の骨部に応力が集中してしまいそれに耐えられなくなってしまった結果だが、そういった実験を検証して対応策を打ち出し大空に舞い上がった人がいた。それは言わずと知れたライト兄弟である。

彼らは自転車を作っていた経験から、柔構造を体感的に理解していて羽根を2枚にし間をフレームでつなぐことで、応力を全体が変形することで受け流すという2枚羽根を作り出したのだ。結果として外的要因、この場合大気という流体による入力が機体に生じても安定した機体形状が得られ動力機であるにもかかわらず崩壊することがなくなった。実際、実用レベルに達したと考えた兄弟は、その機体を世界に向かって発売を開始したくらいである。

柔構造によるFRP一体成型は、ボディ全体に応力を拡散して受け止めるという設計思想で作られているものであり、現代身近に目にするものとしてはクルーザー・ヨットがそれにあたる。300mを超える大型鋼板客船もそれに該当すると思われる。

要はキャブコンなどのサイズで柔構造で設計する場合の素材として、Fiber Reinforced Prastics(繊維強化プラスチック)が丁度良いという判断なのだ。

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