バンテックは、創業当時こそバンコンメーカーだったが、フレアが登場した’08年には押しも押されぬキャブコンのトップメーカーになっていた。そんな状況で、優れたベース車両として登場してきたハイエース・スーパーロングの特装ベース車を、ラインナップに加える試みがd-boxと同様に行われたが、それほど長続きはせず、現在では残念ながらラインナップから消えている。
レイアウト的には極めてシンプルで、前後に向くセカンドシートの後ろには折り畳みのできる巨大なソファベッドを設置し、キャンプ等で必要になるキャビネット型の収納兼キッチンカウンターを設けた。
丸みを帯びた座面のソファを跳ね上げると、広々としたトランポスペースが生み出されるものの、アンカー設備などが設置されているわけではなく、床張りも含めあくまでキャンパー的な作りに徹している。ソファベッドをベッド展開して常設ベッドのように利用するのも簡単だった。
ただこのコンセプトが、今一つユーザー層にアピールしきれなかった。便利なのだがトランポともキャンパーともどっち付かずだったのかもしれない。
実際、余裕ある室内容積に任せて人気のある多人数乗車定員を確保したいなら、ダイネットを形成するために折りたたみのシートをわざわざ作る必要もなかっただろう。こうしたのは、セカンドシートから後ろのカーゴスペースをたっぷり用意したかったからに他ならないのだ。
確かになんでも要求を満たしきる構成は難しいに決まっているのだが、定番の二の字レイアウトをスーパーロングボディで実現したd-box、標準ロングでポップアップを装備するマヨルカなどと比較すると、コンセプトは理解できてもアピール度が低い。できあがりのクオリティが確保されているので、ユーザー層はもっと多機能を欲しがる傾向があったのかもしれない。
正直に言えば、このカーゴスペースを十分使いこなすだけの遊びや方法を知っていて、乗車定員をそれほど普段必要とすることなく、なおかつスーパーロングの大きなボディサイズを日常で取り回せるユーザー層というものが、今一つ日本では成熟していなかっただけなのかもしれない。