‘08年登場のベガは、コーチビルドをする適切なベース車両が存在しない日本において、乗用で設計されているマイクロバスをボディカットすることにより、世界に通用するパッケージで登場させることを目的としていた。
それまでのキャブコンのほとんどが採用するトラックベースのモデルとは異なり、ロングホイールベースでリヤダブルタイヤがもたらす乗り心地の良さは、最先端の装備群と合わせまさにフラッグシップの様相。
FRPキャンピングシェルを載せ拡張された室内は、ベースのコースターとは隔絶した本格的モーターホームの広さと優雅さを持つ。どこの寸法採りにも、無理をして入れ込むということがないのでゆったり感がありリラックスできる。
エントランスドアや、照明、そのほか装備も最新のものがふんだんに取り入れられ、それまでのベガと時代が一気に変わったイメージを持たされている。
世界に通用するイメージでわかりやすいのが、キッチンカウンターの広さ。一応あるというレベルではなく、毎日そして何年でもそこで暮らすことが当然の装備と大きさを標準としているのだ。それはレジャーのためではなく、生活するのが当たり前というそれまでの国産キャンパーにはなかなか体現できなかったコンセプトを埋め込んでいることにほかならない。
マイクロバスベースとなると、スペースの関係からどうしてもトイレ&シャワースペースがサイズ的に追い込まれる。ところが新生ベガではそのデメリットを克服し、生活する空間におけるトイレ&シャワースペースを確保していることも大事な要素と言えた。
もっとも、リヤに位置するベッドルームは基本ツインタイプで、2人仕様として考えられているのも本来のモーターホームらしさの追求だった。ただし、ベッドはいつでもスペーサーでフラットに変更できるし、当時バンテックが構築したシステムにより家庭用セパレートエアコンを埋め込むなどの、特徴的な部分も惜しみ無く投入されている。
贅を尽くしたこのベガ、欲するユーザー数は多かったのだが生産に非常に時間がかかるというのが最大の難点であった。そのため限られた数だけが世に出荷されたが、それらモデルは現在でも皆大事に乗られているようである。
ベースのコースターも新型になり、安全基準の問題でほぼボディカットして作り込むことに意味がなくなりつつあるなか、新たに登場してくるフィアット・デュカトにも興味を示しているバンテック。デリバリーが始まって安定供給されたあかつきには、さらに魅力的な内容になった新型ベガが、デュカトベースで登場してくる可能性はもしかしたらあるのかもしれない。