キャブコンのようにキャンピングシェルを架装するスタイルには、現在大きく分けて2つの工法が採用される。バンテック社の場合は、継ぎ目のない一体成型FRP製ボディを採用している。この工法による利点は、衝突時の衝撃を拡散し乗員への影響を最小限に抑えること。また弾力性に富み、素材とコア構造による断熱性の高さも考慮されている。
もう1つはパネル工法と呼ばれ、アルミやFRPの表面材と内装材の間を断熱材と骨格で埋めた、高剛性で歪みが出にくいパネルを天井や床、壁面に使用して組み立てる工法がある。安全性は乗車する車にとって最も大事なことだが、FRP一体成型のデメリットも記しておくと、その形状を作り出すためにはある程度の材料の使用量が必要であり、その分重量がかさむという点があると一般的には言われている。
ではなぜ一体成型を採用するのか? 見た目のデザインの自由度の高さや日本における雨水侵入に対して強いなどのメリットもいろいろあるのだが、ちょっと例え話がズレるかもしれないが説明してみよう。
飛行機の世界で超初期のまだなかなか地上から人の足が浮き上らなかった時代、リリエンタールという人が鳥の構造を真似た羽根によってかなりいいところまでいっていた。ほぼ滑空していたその機体ではあるが、形状は鳥同様1枚羽根。当時の素材のことも原因ではあるものの、強度を確保することがなかなかできず、滑空中に折れて崩壊することも多くケガを負うこともあったようである。
これは機械と同様な高剛性的な考えで作られ、飛ぶためには軽量化が絶対条件でギリギリまで重量=材料=強度が削られ、羽根の骨部に応力が集中してしまいそれに耐えられなくなってしまった結果だが、そういった実験を検証して対応策を打ち出し大空に舞い上がった人がいた。それは言わずと知れたライト兄弟である。
彼らは自転車を作っていた経験から、柔構造を体感的に理解していて羽根を2枚にし間をフレームでつなぐことで、応力を全体が変形することで受け流すという2枚羽根を作り出したのだ。結果として外的要因、この場合大気という流体による入力が機体に生じても安定した機体形状が得られ動力機であるにもかかわらず崩壊することがなくなった。実際、実用レベルに達したと考えた兄弟は、その機体を世界に向かって発売を開始したくらいである。
柔構造によるFRP一体成型は、ボディ全体に応力を拡散して受け止めるという設計思想で作られているものであり、現代身近に目にするものとしてはクルーザー・ヨットがそれにあたる。300mを超える大型鋼板客船もそれに該当すると思われる。
要はキャブコンなどのサイズで柔構造で設計する場合の素材として、Fiber Reinforced Prastics(繊維強化プラスチック)が丁度良いという判断なのだ。
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