【第25回】シンプルなボディワークで普及版として登場したレオ


ベガやジルの成功を受け、当時のフルサイズ国産キャブコンはますます多機能で充実装備を目指していく方向に動いていった。そして'00年には、ベース車両として安定感のでてきたカムロードをベースに、普及版を狙ったと思われるレオが投入された。

その当時の価格を見てみると、ジルは567万円。ライトキャブコンで格下シャシーのタウンエースベースであるJB-490が448万円。レオは473万円で、サイドオーニング、FF暖房、カセットトイレなど装備群もおごられ、コストパフォーマンスの高いモデルであった。

正直言えば、やはりキャブコン単体価格が500万円を突破していることが「高い」というイメージにつながってしまう時代であり、ある意味販売戦略的な要素が強いモデルだったのかもしれない。何しろ日本はデフレの真っ只中だったのだ。

バンテック キャンピングカー レオ

コストを抑えられたのは、一にも二にもコーチ部ボディーワークとしてそれまでバンテックがJB-500以来こだわっていたFRP成型ではなく、初めてパネル工法を採用したことが大きい。そのため見た目が普通というかいかにも普及版、デザインで頑張って価格が上がることすら回避したであろうと想像できた。

もちろんこの製造方法を採用する背景には、工期の短縮化や製造設備の簡素化が見込まれる。だからこそ世界中で採用され、リーズナブルなモデルが登場してくる手法として採用されているのだ。

バンテック キャンピングカー レオ

ボディサイズは全長5m未満に抑えられてはいるが、車幅はなんと2.08m。レイアウトは当時定番中の定番の、サイドソファのあるダイネットという構成。ジルとの違いは、左右が反転していることで、使い勝手という点では好みによるところが大きいだろう。

室内に入ると、ボディ形状や幅からくるものか、かなり広さを感じた。バンクベッドのヘッドクリアランスがたっぷりなのも、実用性で言えば相当優位。大型の清水タンクや排水タンクの装備なども含め、外観デザインよりも使い勝手を優先したことは明らかだ。

バンテック キャンピングカー レオ

バンクベッドは前部が持ち上がっていることもあって本当に広い。’02年にモデルチェンジしたときにはルーフがフロントにスラントする形状に変更され、そのイメージが若干変わった。そのほかは基本的に同じだ。さらにモデルチェンジと同時にバンクスが追加された。

このバンクスというグレードは現在発売されているモデルにも登場する名前だが、大雑把に言えば、さらに普及版を目指し、装備を簡略化したモデル。当然その分車両重量も軽くなるので、当時のノンターボディーゼルエンジンでも、軽量に作りやすいパネル工法と相まって、エンジンの非力さがストレスになることが避けられた。ちなみに当時の5Lエンジンは、排気量2985㏄、出力91馬力、トルク19.5㎏mであった。

パネル工法はその後、アトムにも採用されていくのだが、現在のキャブコンのラインナップには存在しておらず、今後ふたたび採用されるかどうかは分からない。今になってみれば、かなり思い切った模索だったのだろうと思う。そして販売期間が短かったのは、ユーザー層がバンテックらしいデザインを望んだ結果なのかもしれない。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第24回】ポンピングして空気を圧縮 簡易水洗式のポータブルトイレ


たとえば車中泊をしていて、夜中にトイレに行きたくなったとき。そして雨が降っているとき。冬場で寒いとき。いずれも車から出たくないというシチュエーションだが、そんなときにトイレが車内にあると便利だ。

日本のキャンピングカーのトイレは大きく分けて2タイプあり、ひとつが国産キャブコンなどに装備されている車内に固定されたカセットトイレ。

もうひとつがバンコンをはじめとしてミニバンでも積めるポータブルタイプだ。もちろんキャブコンに積んで使ってもかまわない。

ポータブルタイプは上部に清水タンク、下部に汚水タンクがあって上下に2分割できる構造になっている。あらかじめ清水タンクには便器への汚れ付着防止に洗浄剤、汚物タンクには消臭材を投入して使う。

今回紹介するポータブルトイレは上部の清水タンクに水を入れ、ハンドポンプをポンピングすることで空気を圧縮。タンクの中の水を高水圧で流すことができる簡易水洗タイプだ。清水タンクの容量は8.7Lあって、最大で26回の水洗ができる。

下部の汚物タンクは容量9.8L。溜まった汚物は家のトイレなどに流して処理するのだがその際に汚物タンクの排出口の筒を外側に向けることができるので、ハネ返りなしで処理ができる。

サニポッティー972よりも汚物タンクの大きなサニポッティー976という商品もあり、こちらは汚水タンクがほぼ倍の18.9Lある。大きなタンクのほうが、汚物を捨てる回数は少なくなるので便利だが、その反面、タンクが重たくなるので、持ち運びが大変になる。小さなタンクでマメに処理をするというのも選択肢のひとつだ。

キャンピングカー用ポータブルトイレ サニポッティー972 9.8L

ポータブルトイレ 144064 サニポッティー972
価格:16,200円(税込)

浅井 佑一
著者:浅井 佑一
キャンピングカー専門誌「オートキャンパー」編集部を経て、現在は旅とキャンピングカーをテーマにしているフリーライター。キャンピングカーで車中泊しながら、全国の道の駅をまわっている。旅の様子は「オートキャンパー」にて連載中。 http://rvtravel.jp

【第23回】パワーと余裕を求めエルフベースの快走モデル登場


カムロードが登場し、それをベースにしたジルも大人気モデルとなったが、当時のカムロードはノンターボのディーゼルエンジンであり、登坂車線を走らざるをえないこともままあった。走りという意味ではかなりストレスが溜まっていたのかも知れない。そんな不満を晴らすように’99年には許容架重重量が大きないすゞ・エルフをベースにしたクルーズが登場した。

バンテック キャンピングカー ジルクルーズ 外観

リヤダブルタイヤによる架重に対する余裕があり、キャンプグッズを満載してもへこたれない。重量物となる水を満載していても、不整路面をものともしないのには驚かされた。パワーがあるので乗り心地と走破性のどちらを優先するかが悩ましい時代に突入したのを覚えている。

現行モデルにもジルクルーズは存在するが、ベースになっている520の前後左右バランスがよく、スムーズな走りはそのままに、さらにパワフルでしっかりした車体感を持つモデルに昇華され、乗り心地といった面でもかなり改善されたように思える。

バンテック キャンピングカー ジルクルーズ 内装

室内はジル同様、引き出して広々使える巨大なバンクベッドを持ち、右サイドソファというレイアウトもそのまま継承。装備的にも大きな違いはなく、車体そのものに余裕ができた分、オプションなどで重量を気にせず装着できるといったメリットが際立った。

バンテック キャンピングカー ジルクルーズ 外観

ダイネット空間は、ジル同様全面ベッド展開が可能。マットの境目のフラット感も高く、バンクと合わせると余裕で大家族に対応できた。対面ダイネットを展開せず、掘りごたつ状態で利用するのがユーザー層に定着したのもこの頃である。

バンテック キャンピングカー ジルクルーズ 内装

天井を見てみると、現行にも続く曲線を取り込んだ意匠が見て取れる。まだ間接照明や、LEDライトは未装備。今だと当たり前のように装着される高性能ルーフベンチレーターがダイネット上部にないあたりに、価格と快適性をユーザー側が計りかねているのを感じる。

現代では、ベンチレーターはおろかセパレートエアコンを装備するのがこのクラスでは当たり前になってきて、時代差を感じる。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第22回】照明を変えるだけで車内の雰囲気をグレードアップ


家庭の照明と比べると、キャンピングカー車内の照明は光源が目に近いところにあるので影響も大きい。

たとえば車の運転で疲れた目は明るさを感じやすくなるが、長時間運転したあとでダイネットでくつろごうと思っても、ただ明るいだけの照明だったら、まぶしくて余計に目が疲れてしまう。

さらに色でいえば、蛍光灯のような青味を帯びた光よりも、電球のような暖かみのある光のほうがよりリラックスできるだろう。

最近は省エネのために蛍光灯や白熱灯をLED照明に交換する人が増えているようだが、そこでおすすめしたいのが光学メーカーである日東光学が作った「モビライト」だ。

2015年にドイツ・デュッセルドルフで行われた世界最大規模のキャンピングカーショーに出展して、現地でも好評だったという注目のLED照明だ。

明かりがついた状態を見ればその違いは一目瞭然。「面発光」が特徴で、LED照明でありながら発光面が均一に光る新しいタイプの照明である。

明るさは太陽の日の入り1時間前と同じ色温度3000K(ケルビン)に設定されていて、車内でくつろぐのにちょうどいい明るさ。

それに普通のLED照明だと光が一直線に進む指向性が強く、明るいところと暗いところのコントラストがつきすぎて、目には好ましくないが、モビライトは照明本体にフレームがなく、外周部分も明るく周辺全体を照らしてくれる。

いまのところは正方形で150×150㎜と60×60㎜の2サイズをラインナップ。今後はスポットライトやライン型を追加する予定だ。

キャンピングカーパーツ LED拡散照明 モビライト

LED拡散照明
♯211078 モビライト150×150
価格:14,040円(税込)

浅井 佑一
著者:浅井 佑一
キャンピングカー専門誌「オートキャンパー」編集部を経て、現在は旅とキャンピングカーをテーマにしているフリーライター。キャンピングカーで車中泊しながら、全国の道の駅をまわっている。旅の様子は「オートキャンパー」にて連載中。 http://rvtravel.jp

【第21回】本格モーターホームを目指した大型モデルのベガ


’90年代は半ばを過ぎると、輸入車、特に北米製の大型モーターホームが人気を獲得。その家庭と変わらない使いやすさに、日本のキャンプシーンが一変した時期であった。そんな中、国産の大型モーターホームの礎になったと思われるのが、’98年登場のベガだ。コースターベースまで発展したモデルだったが、現在は製造を中止している。

バンテック キャンピングカー VEGA(ベガ)

余裕の全長にリヤダブルタイヤによる架装重量の増加など、装備を惜しみなく組み込んでも対応できるボディサイズを実現していた。当時はベース車両として三菱キャンターを採用。

バンテック キャンピングカー VEGA(ベガ)

ジルで成功した広いラウンジ形状のダイネットの後方には、独立したL字のキッチンを持ち、その使い勝手のよさは輸入モーターホームのそれと同等以上。動線の確保や余裕ある室内高により、それまでの国産にはない圧倒的な開放感を獲得した。

バンテック キャンピングカー VEGA(ベガ)

車両中央部にキッチンとトイレ&シャワールームを設置し、最後部にはかなり幅のある常設リヤベッドを設定したので、就寝時にダイネットを組み替えないでもよくなった。車体幅があるため、横向きにベッドを設定できるようになったは最大のメリットだった。

バンテック キャンピングカー VEGA(ベガ)

高い天井を生かした広々としたバンクベッドを装備。こちらの方は正真正銘大人が3名寝られるという巨大サイズ。そのため、ファミリーユースでもダイネットをベッドに組み替えることはまずないのである。

現在、国産キャブコンにおいてベガのようなモーターホーム的要素を持つモデルはほとんどない。販売価格が大台を越えるということもあり、単一モデルとしては販売不振に陥る可能性は否めないのだが、昨今のキャンピングカーユーザーの動向を見ていると、国産モーターホームの必要性を感じる。

実際、景気が落ち着いてきたせいか輸入モーターホームもそこそこ復権してきているし、数か月単位で旅するユーザー層は、車両のメンテナンスや装備品の確保のしやすさといった点を重視する傾向があり、その数も着実に増えているのだから。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com