現在も製造されている1ボックスキャンパー「マヨルカ」の登場は‘91年にまでさかのぼる。当時はベース車両が100系ハイエースの標準ロングボディ。いわゆる今ではほとんど聞かれなくなった小型車規格の全長・全幅枠に入るもので、それがそのままコンセプトとも言えるようなモデルだった。
ただ、限られた室内容積を最大限に利用できるようにするため、当時としては驚くべき高さのハイルーフを装着し、大人が室内を立って歩ける快適な空間を作り出した。もちろんそこには、2段ベッドという機能も持たせていた。
‘90年代初頭はどのメーカーもまだサイズや装備が模索中の時期で、徐々にスーパーロングをベースにした1ボックスキャンパーが台頭し始めた頃。その一方で、価格的にもリーズナブルで二足のわらじ的にも使える標準ボディをベースにしたタイプがかなり人気となっていた。
写真を見ての通り、現代モデルとの相違はこのハイルーフにある。当時、ポップアップルーフの認知度が低く、耐候性や装備として不安を持つ人も多かったためハードタイプのハイルーフの方が好まれていた。今だったら、扱いやすいサイズで立体駐車場への進入なども考慮されるようになり、ポップアップルーフが再考されている事を考えると、それだけの時間経過があったんだなと改めて思う。
マヨルカ発売以前にバンテックがOEMで供給していた「ゆとり」というかなりヒットしたモデルがあるが、マヨルカはその発展系である。そのため、小さいボディでありながらフルセットの装備を詰め込んだ感があり、今の時代にこれがあればそこそこ人気が出るのではと思うくらい。
実は最近の傾向として、4ナンバー登録のキャンパー装備を持つモデルが人気だ。全高は足りなくてもそのボディサイズの全長・全幅がいいというユーザー思考が強いようなのだ。また、標準ロングボディを8ナンバーにして、ポップアップやハイルーフという選択肢も復活してきている。
もちろん現行マヨルカはその路線にある。
長くキャンピングカー業界に携わっていると、時代がグルッと一周したのかと思う事が多く、乗用車代わりに手にする人々が復活し始めている感じを受ける。当時、コンパクトな1ボックスキャンパーに乗っていた子供の世代が新たなユーザー層として芽吹いてきたのかもしれない。