キャンピングカーを旅車として選択するユーザーにおいて顕著なのが、ペット同伴の移動をメインに据えその所有率が通常の車より高いことが挙げられる。特に中型犬以上のワンちゃん連れのご家族は驚くべき頻度である。
もちろんそれは“家族”であることも重要なのだが、自由な時間に一緒に旅できることや、ペット同伴による宿泊に自由度が少ない日本の環境が影響していることは間違いないだろう。さらに時代が進み、国産のモーターホーム系が停車時にもエアコンが使えるようになってきた意味合いは、ある意味絶対条件になりつつあるのかもしれない。
そんな事情が影響してか、バンテックにかなり特異なレイアウトと装備内容で登場して来たのがランディ。正直言えば大ヒットモデルというわけではないが、見る人が見れば“ウゥ~ン”と唸らせる内容がてんこ盛り。
それを実現するため、乗車定員は6名ながら、レイアウトはまるで2人で使用することが前提になっているような趣き。移動時はフロントシート、くつろいでいるときは車両後ろ半分が丸々ラウンジ型ダイニングという大胆なもの。
フロントシート上にあるバンクベッドは、通常とはかなり違う折りたたみ式ツインベッド仕様。横に寝ている人に気を使うことが少なく、フロントシートからマルチルームやリヤダイニングスペースへの移動がすこぶる楽な移動になるよう設計されている。
今やペット連れキャンピングカーの定番となりつつあるセパレートエアコンを装備し、移動の食事や休憩時にサブバッテリーでエアコンを3時間以上駆動することができるので、安心して車内に置いていけるのもありがたい機能なはずだ。
また、このエアコンの下スペースは一段高い設定になっていて、キャブとシェルの高さ段差をかなりの床面積で吸収している。その横側面下部にはウインドウが付き、ワンちゃんが外を眺めていられるという嬉しい特典付き。さらにそのスペースは、ちょうどワンちゃんが移動中に中央から前を見るのにいい位置になっているのも見逃せない。
特筆すべきは、エントランスを開けた目の前のフロアが、マルチルームまでつながる一体型シャワーパン構造になっていて、“土間”と呼ばれるそのスペースのおかげで、散歩から帰ってきてもそのまま上がれるし、靴も履いたままで大丈夫。もちろん水洗いで流せるドレンを装備しているので、通常の使い勝手をスポイルすることがないどころか利便性は高まっていると言える。
万人の目的の最大公約数ではなく、使う目的者のニーズをきっちり拾い上げる、そんなモーターホームがワンオフモデルではなくカタログモデルとして登場してきた意味合いは、ある意味日本のモーターホーム市場の成熟度が高まって来たことを意味しているようだ。