【第23回】パワーと余裕を求めエルフベースの快走モデル登場


カムロードが登場し、それをベースにしたジルも大人気モデルとなったが、当時のカムロードはノンターボのディーゼルエンジンであり、登坂車線を走らざるをえないこともままあった。走りという意味ではかなりストレスが溜まっていたのかも知れない。そんな不満を晴らすように’99年には許容架重重量が大きないすゞ・エルフをベースにしたクルーズが登場した。

バンテック キャンピングカー ジルクルーズ 外観

リヤダブルタイヤによる架重に対する余裕があり、キャンプグッズを満載してもへこたれない。重量物となる水を満載していても、不整路面をものともしないのには驚かされた。パワーがあるので乗り心地と走破性のどちらを優先するかが悩ましい時代に突入したのを覚えている。

現行モデルにもジルクルーズは存在するが、ベースになっている520の前後左右バランスがよく、スムーズな走りはそのままに、さらにパワフルでしっかりした車体感を持つモデルに昇華され、乗り心地といった面でもかなり改善されたように思える。

バンテック キャンピングカー ジルクルーズ 内装

室内はジル同様、引き出して広々使える巨大なバンクベッドを持ち、右サイドソファというレイアウトもそのまま継承。装備的にも大きな違いはなく、車体そのものに余裕ができた分、オプションなどで重量を気にせず装着できるといったメリットが際立った。

バンテック キャンピングカー ジルクルーズ 外観

ダイネット空間は、ジル同様全面ベッド展開が可能。マットの境目のフラット感も高く、バンクと合わせると余裕で大家族に対応できた。対面ダイネットを展開せず、掘りごたつ状態で利用するのがユーザー層に定着したのもこの頃である。

バンテック キャンピングカー ジルクルーズ 内装

天井を見てみると、現行にも続く曲線を取り込んだ意匠が見て取れる。まだ間接照明や、LEDライトは未装備。今だと当たり前のように装着される高性能ルーフベンチレーターがダイネット上部にないあたりに、価格と快適性をユーザー側が計りかねているのを感じる。

現代では、ベンチレーターはおろかセパレートエアコンを装備するのがこのクラスでは当たり前になってきて、時代差を感じる。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第21回】本格モーターホームを目指した大型モデルのベガ


’90年代は半ばを過ぎると、輸入車、特に北米製の大型モーターホームが人気を獲得。その家庭と変わらない使いやすさに、日本のキャンプシーンが一変した時期であった。そんな中、国産の大型モーターホームの礎になったと思われるのが、’98年登場のベガだ。コースターベースまで発展したモデルだったが、現在は製造を中止している。

バンテック キャンピングカー VEGA(ベガ)

余裕の全長にリヤダブルタイヤによる架装重量の増加など、装備を惜しみなく組み込んでも対応できるボディサイズを実現していた。当時はベース車両として三菱キャンターを採用。

バンテック キャンピングカー VEGA(ベガ)

ジルで成功した広いラウンジ形状のダイネットの後方には、独立したL字のキッチンを持ち、その使い勝手のよさは輸入モーターホームのそれと同等以上。動線の確保や余裕ある室内高により、それまでの国産にはない圧倒的な開放感を獲得した。

バンテック キャンピングカー VEGA(ベガ)

車両中央部にキッチンとトイレ&シャワールームを設置し、最後部にはかなり幅のある常設リヤベッドを設定したので、就寝時にダイネットを組み替えないでもよくなった。車体幅があるため、横向きにベッドを設定できるようになったは最大のメリットだった。

バンテック キャンピングカー VEGA(ベガ)

高い天井を生かした広々としたバンクベッドを装備。こちらの方は正真正銘大人が3名寝られるという巨大サイズ。そのため、ファミリーユースでもダイネットをベッドに組み替えることはまずないのである。

現在、国産キャブコンにおいてベガのようなモーターホーム的要素を持つモデルはほとんどない。販売価格が大台を越えるということもあり、単一モデルとしては販売不振に陥る可能性は否めないのだが、昨今のキャンピングカーユーザーの動向を見ていると、国産モーターホームの必要性を感じる。

実際、景気が落ち着いてきたせいか輸入モーターホームもそこそこ復権してきているし、数か月単位で旅するユーザー層は、車両のメンテナンスや装備品の確保のしやすさといった点を重視する傾向があり、その数も着実に増えているのだから。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第19回】’98年に決定的な定番モデルとなったZiL


1998年になるまで国産キャブコンは専用シャシーがなく、各ビルダーが思い思いのベース車両に架装していた。一方欧米では、キャンピングカーやモーターホームに架装するための専用ベース車両が多数用意され、日本のトラックベースと比較すると走行性能や乗り心地の点で大きく水を開けられていた。

その状況を打開するため、国産のキャンピングカー専用シャシーの登場が切望されていたが、当時の国産コーチビルドによる製造台数の少なさから、なかなか自動車メーカーが手を出さない状況。ジルはそんななか、シャシーメーカーと同時進行で開発されたモーターホームであり、走行テストなども行われて登場した。

シャシー自体はダイナトラックであるが、内容的にはキャンピングカー専用に用意されたもので、このモデルが各キャンピングカービルダーに供給される段になってカムロードという名称が与えられている。主な変更点は足回り、ボディサイズに対応するトレッド幅などである。

Zilダイナベース2

室内レイアウトは右側ソファで、現在のジルに続くバンテックのオリジナル。ボディサイズアップとなった現行でもこのレイアウトが続いているだけあり、まさにド定番中の定番だ。ちなみに当時はこういったシート生地が、世界的にはやっていたのが懐かしい。

実際に走った感じでは、標準幅とワイドトレッドでコーナーリングの安定性というか、ボディの傾きに差が出ていたのが印象的ではあった。

Zilダイナベース3

ジル以前の各社キャブコンのバンクベッドは折り畳み式が多かったが、ジルではスライド量を確保したことにより大人3名が寝られるサイズになったのが驚異的だった。フロアの長いソファをベッド状態にセットし、掘りごたつ状態にしておけばそれだけで家族で普通に就寝できるくらいだ。

Zilダイナベース4

トイレ&シャワールームに大型バゲッジドアを付け、雨の日の濡れモノ収納が楽になった。流石にこの辺りは、欧州のライモから各種パーツを直接輸入販売しているバンテックならではの装備であり面目躍如といったところ。

こうしてみてみると、装備や大きさレイアウトなど今の国産モデルのほとんどにそのコンセプトが引き継がれているのが分かり、この時から本当の国産キャブコン定番モデルが確立したのだと理解できる。 

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第17回】トレーラーブームに乗り超軽量モデル「サンスター」投入


サンスターが登場したのは’97年。それ以前のトレーラーと言えば、普通免許でけん引できるモデルが主流、というよりほぼそれしか存在していなかった。当時はトレーラーの車検登録が非常に曖昧で難しかったことも原因のひとつだ。

筆者はこの頃、トーイング普及会という至極個人的な集団を業界内に立ち上げ、自分のトレーラーを何にしようかじっくり時間をかけ選定中の時期であった。

サンスター登場の少し前あたりから、ウッドランド社がバーストナー、アルク社がエクセルというモデルを正規代理店契約を取り付け、廉価な普及版を大量投入してきた時期であり、そこへバンテックも正規輸入でサンスターを導入。それまでのテントトレーラーやフォールディングタイプ、国産モデルまで多種多様の選択肢でいっぱい。

結局当時ドイツの本社とも付き合いがあり、自分のわがままで日本にサンプルを入れてもらったハイマー社の超小型トレーラーを購入したのだが、正直言えば相当サンスターは購入時に迷ったモデル。その理由は、通常のセダンのような小型乗用車で、当たり前にけん引できるのが正しい楽しみ方だろうと個人的に感じていたから。そうしないと法律遵守が大変だったのだ。

バンテック キャンピングトレーラー サンスター 内装

サンスターは写真を見ての通りでフル装備なのに車両が軽いことが魅力。キッチン、3ウェイ冷蔵庫、カセットトイレ、暖房、それらがフル装備で付いていて余裕の室内空間なのだから。当時自分には子供ができた時期でもあり、そのスペースの優位性が素敵に見えたのだ。

正直言えば、軽さは壁面材などの厚みが薄いタイプであったり超軽量で多少華奢な家具類だったりもしたのだが、欧州的にこの頃からグッと変わり始めた室内レイアウトデザインには新しさを感じたものである。

また、頭の中では小型乗用車でのけん引しか考えていなかったこともあり、ブレーキは電磁タイプではなく機械式慣性タイプが小型モデルにむいているであろうことも、後々のメンテナンスのしやすさやコストパフォーマンスが優れいていることも大体理解していた。

現在ではキャンプといえば誰もついて来てくれない一人旅、そういう意味では乗用車より小さくフル装備のモデルで何処へでも気兼ねなく引っ張っていけるのが有り難いと思っているのだが、やはりトイレが常設で装備されているモデルへの憧れは止まないでいる。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第15回】余裕のシャシーを求め、エルフを採用したTerra500


’94年になると、それまで絶好調だったJB-500に加え、キャブコンとして2モデル目となるテラ500をリリースした。JB-500は、ベース車両がデリカトラックという小型タイプで、積載量的にも850㎏・1000㎏クラスのモデル。積載可能重量も少なめだった上にスペースも狭かったので、フレームとホイールベースを20センチ以上延長するという大胆な手法が採用されていた。

そこでテラ500では余裕の積載量を持つエルフをベースに、キャンピングシェルを搭載するという新しいチャレンジが行われたのだ。それにより車格はぐっとグレードアップしたし、キャンプグッズを満載にしてもヘコタレないカッチリとしたモーターホームに仕上がった。

バンテック キャンピングカー Terra500

車格がワンランクアップしたのに加え、かなり大胆なFRP積層工程を取り入れパーツが大きく作られるようになり、ルーフなどは1枚もので雨による浸入を極力なくすことにも成功している。

現在発売されているモデルではさらに大きな型による成型を行い、ほぼ一体成型と言うレベルにまで昇華しているが、当時からの技術の積み重ねであることはいうまでもない。

バンテック キャンピングカー Terra500

室内はJB-500のイメージをかなり色濃く残していたが、当時はまだ珍しかった常設リヤ2段ベッドを採用。バンクベッドと合わせると、ダイネットを組み替えないでも家族4人が就寝できるという画期的なスタイルを採用。その便利さで一気に広まった。

好調に販売を伸ばすテラ500だったが、実はこのときベース車両に不具合が見つかり、国内トラック市場において大きな騒ぎになった。もちろんテラ500もそれに飲み込まれてしまうわけだが、バッテックは懸命に対処して、難局を乗り切った。

そんなこともあってか、テラ500そのものの販売年数は少なかったのだが、そこで培われた技術とノウハウは現行モデルを製造する上で活かされている。

テラ500はかなり頑丈なモデルのようで、20年経った今でもわりと見ることができる。丸みを帯びた特徴的なバンクベッドのデザインなども含め、ある意味名車だったのかもしれない。

そしてエルフベースはクルーズという名を与えられジルで復活する。そう考えると大ヒットしたJB-500と、次モデルのテラ500のいいとこ取りをして登場してきたのが、今に続くジルなのだなと理解できる。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com