【第13回】現代にも通用する標準ボディ・ハイルーフのマヨルカ


現在も製造されている1ボックスキャンパー「マヨルカ」の登場は‘91年にまでさかのぼる。当時はベース車両が100系ハイエースの標準ロングボディ。いわゆる今ではほとんど聞かれなくなった小型車規格の全長・全幅枠に入るもので、それがそのままコンセプトとも言えるようなモデルだった。

ただ、限られた室内容積を最大限に利用できるようにするため、当時としては驚くべき高さのハイルーフを装着し、大人が室内を立って歩ける快適な空間を作り出した。もちろんそこには、2段ベッドという機能も持たせていた。

バンテック キャンピングカー マヨルカ リビング

‘90年代初頭はどのメーカーもまだサイズや装備が模索中の時期で、徐々にスーパーロングをベースにした1ボックスキャンパーが台頭し始めた頃。その一方で、価格的にもリーズナブルで二足のわらじ的にも使える標準ボディをベースにしたタイプがかなり人気となっていた。

写真を見ての通り、現代モデルとの相違はこのハイルーフにある。当時、ポップアップルーフの認知度が低く、耐候性や装備として不安を持つ人も多かったためハードタイプのハイルーフの方が好まれていた。今だったら、扱いやすいサイズで立体駐車場への進入なども考慮されるようになり、ポップアップルーフが再考されている事を考えると、それだけの時間経過があったんだなと改めて思う。

バンテック キャンピングカー マヨルカ 室内

マヨルカ発売以前にバンテックがOEMで供給していた「ゆとり」というかなりヒットしたモデルがあるが、マヨルカはその発展系である。そのため、小さいボディでありながらフルセットの装備を詰め込んだ感があり、今の時代にこれがあればそこそこ人気が出るのではと思うくらい。

実は最近の傾向として、4ナンバー登録のキャンパー装備を持つモデルが人気だ。全高は足りなくてもそのボディサイズの全長・全幅がいいというユーザー思考が強いようなのだ。また、標準ロングボディを8ナンバーにして、ポップアップやハイルーフという選択肢も復活してきている。

もちろん現行マヨルカはその路線にある。

長くキャンピングカー業界に携わっていると、時代がグルッと一周したのかと思う事が多く、乗用車代わりに手にする人々が復活し始めている感じを受ける。当時、コンパクトな1ボックスキャンパーに乗っていた子供の世代が新たなユーザー層として芽吹いてきたのかもしれない。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第11回】早い時期からトレーラーも手掛けた


バンテックといえばバンコン、キャブコンメーカーとして知られているが、以前はトレーラーの販売もしていた。それも1992年頃から北米製の折りたたみトレーラーを輸入販売している。世界的に見ると自走式とトレーラーの両方を取り扱っているのが一流メーカーの証でもあり、それに倣ったのかもしれない。

一番最初に輸入したのはA-Liner(エーライナー)というハードシェルの折りたたみタイプ。走行時の後方視界がよく軽量で、面白いトレーラーだから輸入してみようというバンテックの読みは当たり、予想以上に販売台数が伸びた。その後、さらに小さくてコンパクトなA-Lite(エーライト)というモデルも併売している。

バンテック キャンピングトレーラー A-Liner(エーライナー)

フックを外すとふっと立ち上がる屋根、サイドウェールをパタンパタンと立ち上げてセット完了するまで1分足らず。目の前に広がる2ダイネットにキッチンのある室内は、キャンプするのに十分過ぎる空間だ。

輸入された当時、セルフローダーに積載して公園へ出かけ雑誌用の撮影をした。確か一緒に自走式のキャンピングカーも撮影したはずだがA-Linerのギミックの印象が強すぎて何を運転していったか思い出せない。

その後、輸入されたA-Liteを見たとき、当時乗っていたオースチンminiというクルマにヒッチを付けていたので、真剣に購入を考えた。トイレの装備がなかったので踏みとどまったが……。

今でも同様のモデルが他社で輸入されているが、こういったコンセプトのトレーラーならリーズナブルな価格だし、運転やメンテナンス、維持も楽なので、もっと車中泊主体の人などに受けてもいいと思うが、日本の法規と高速道路の通行料金などが邪魔になって流行らないのだと想像する。残念だ。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第9回】丸さが可愛かった、JB470小型キャブコン


バンテックでは1992年よりキャブコン製作を始め、その時期から山形工場が起動し、さらにラインナップを拡充。そこで作られた小型タイプのキャブコンがJB470だ。その外観デザインの斬新さはヨットに由来すると聞いた。

ボディがヨット同様に柔構造で成り立っていて、室内キャビネットなども構造物の一部だと言われ、アメリカンなパネル工法しか知らなかった自分には、かなりの衝撃が走ったのを覚えている。

発売された'95年当時は、まだ四駆ブームの名残りがあり、オートキャンパー誌が長期試乗に借りていた車両にも、できるだけ大きなサイズのタイヤに履き替え、結構なガレ場にも突入し、その走破性の高さ、可能性の高さに驚いたものである。

バンテックキャンピングカー JB-470 室内全景

その当時スタンダードになりつつあった2×5mの車体より一回り小さく、街中走行も軽快、ボディ形状から横風などにも強く、エンジンはターボディーゼルでトルクたっぷり。日常の足として利用しても違和感なかったのを覚えている。

特徴的だったのが、ルーフコーナーの左右に取り付けられた採光窓。大型窓が取り付けられる時代ではなかったので、そこから差し込む日差しで室内が明るく、さほど天井の高い室内でないものの開放感があり、車格以上の雰囲気を持っていた。

バンテックキャンピングカー JB-470 ベッド

走りもさることながら就寝スペースも充実していて、家族でのサービスエリアユースの仮眠などもお手のもの。ベッドメークもしやすく、このあたりの雰囲気はのちのモデルに引き継がれていると思う。

今でこそベース車両の都合でこういった小型キャブコンモデルがほとんど見当たらなくなってきたが、このクラスが元気になれば、もっとキャンピングカーが普及するのだろうなと思わせる車だった。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第7回】コーチビルドが始まったJB-500


私個人の話になるが、JB-500との関わりは深い。図面ができ始めた頃から取材を開始、話を聞きながら3面透視のイラストをその場で描き、完成予想図を当時の社長と膝詰めで検討。イラストはそのままオートキャンパー誌に掲載した。

取材は'91年に始まり、現車が登場したのが'92年。残念なことに当時のポジ写真等がバンテックで見つからず、自宅サーバーに残しておいた当時のデータが白黒の低解像度で出てきた。このあたりに時代を感じる。写真はターボ車がベースに採用されたとき、出向いた時に自分で撮ったと思われる'94年のもののはずだ。その辺の記憶が曖昧。

jb-500-m

その当時はヨコハマモーターセールスのロデオ4WD RV全盛の頃で、対抗馬がグローバルのギャラクシー。どちらもピックアップをベースにしたマイクロミニスタイルだ。そこへキャブオーバー型で全長が短く、居住空間の広い新スタイルとしてJB-500が登場した。

今見ても、このサイズで次に続く、そして今へと受け継がれているジルシリーズの礎になったことは間違いないと確信できる。それほど当時としては先進的なデザインだった。

バンテックとしては初のコーチビルド、キャブコンの製作であったにもかかわらず、完成度が高かったのは欧州車を研究しつくした結果でもあった。当時のバンテック社では、欧州最高峰のハイマーのモーターホームを細かい部分まで調べ上げ研究していたのである。

ちなみに、当時の諸元によると

●デリカ JB−500主要諸元

ベース車両:デリカトラック4WD
シフト形式:フロア5MT
全長×全幅×全高:4980×2000×2980㎜
ホイールベース:2400㎜
乗車/就寝定員:6/4〜5名
エンジン:直4OHCディーゼルターボ
最大出力:85㎰/4200rpm
最大トルク:20.0㎏m/2000rpm
燃料タンク容量:軽油・65ℓ
価格:438万円

●標準装備品:フロントエアコン/85ℓ清水タンク/18ℓ飲料水タンク/100ℓ排水タンク/2口コンロ/49ℓ3ウェイ冷蔵庫/温水器/カセットトイレ/100Aサブバッテリー/外部AC電源入力/TVアンテナ/リヤラダー/ルーフキャリヤ

●オプション:LPガスFF暖房/バックモニターカメラ/サイドオーニング/リヤエアコン/シャワー室バゲッジドア/防震ジャッキ/自転車キャリヤ/強化ショック

である。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第5回】始まりはワンボックスキャンパー


 バンテックセールスは歴史のあるメーカーなので、これまでにどのようなモデルが存在したかを、筆者の記憶を頼りにしばらく書きつづってみようと思う。

 今でこそ、日本のコーチビルダー筆頭にも挙げられるが、’86年創業当時は1年を経てキット販売を始め、その後、矢継ぎ早にモデルを増やしていった。いわゆるコンバージョンメーカーだった。

 最初のLT-2型キットの次はフルハウス、サザンスポーツ、フォーシーズン、ステラ、アリス、マヨルカと続いていく。ちょうどこの頃、筆者はこの業界に関わり始め、なんとか記憶に残っている。

 

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 衝撃的だったのはサザンスポーツ。そのデザインと先進的な装備群には目を見張るものがあった。’88年当時のバンテックはドイツの大手パーツ商社であるライモ社と提携したこともあり、欧州での最先端パーツをこぞって投入してきたのだ。

 それは、当時の国産モデルには見られない異次元の完成度というか仕上がり、デザインであり、見た目だけでなく洗練された使いやすさも兼ね備えていた。

 

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 当時試乗したイメージもまだ残っている。使い勝手は現代のモデルと変わらないと思う。走りに関しても、今と比べると貧弱なエンジンであったにもかかわらず、意外にキビキビ走っていた。現代のように排ガス、衝突、その他諸々の事情が付加されていなかった車は、かなり軽かったのだろう。

 自説であるが、小型キャンピングカーは軽いほうがいいと思っている。現行モデルでは、豪華さや多機能がそこまで必要なのかと考えさせられる。そう思えば当時のモデルで十分だったかもしれない。現代のモデルのほうが安全であることは間違いないが…。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com