【第75回】同乗者の安全を確保するリライアンスシート


キャンピングカーといえど、基本は車。走行時は通常前向きに着座し、その全員がシートベルトをしていることが求められている。もちろんこの場合、前向きシートは3点式シートベルトが基本であり、国交省発表でも非着用時の致死率は着用時と比べ14.5倍となっているので重要な項目である。

バンテックが採用するリライアンスシートは、平成28年に施行された新安全基準をクリアしたシートフレームをすべての前向き座席に標準装備。ISOFIXではないがチャイルドシートの装着も可能で、乗る人を守るという取り組みが平成24年からなされている。

キャンピングカーの場合、着座するシートはベッド展開することも多く、この安全基準とどう折り合いをつけるかは設計段階でかなりの苦労が強いられるところ。

新基準ができた後、乗用車では運転席だけではなく助手席、リヤシートにもシートベルトリマインダーという警報装置を付けることが義務化されているが、キャンピングカーのカテゴリーにおいてはトラックやバス同様にフロントシートのみで保安基準を満たす。さらに、後ろ向きシートや横向きの場合はシートベルトの構成も2点式でよかったりする。

このおかげで、なんとかベッド展開を含めキャンピングカーらしいシート構成が可能になっている。何しろ“らしい”シートが使えないと、キャンピングカー最大の利点である快適な寝心地を実現することができないので、どこのメーカーも頭を悩ませていたのである。

また平成28年の警視庁とJAFの調べによると、フロントシートのシートベルト着用状況は一般道路・高速道路を問わず94%を超えているものの、後部座席での一般道路でのシートベルト着用率はわずか38%前後と非常に低い水準。

キャンピングカーは大事な家族を乗せ楽しい時間を一緒に共有するための道具なので、激しい運転をすることはないとしても、やはり後部座席でもきっちり3点式シートベルトをする習慣を家族全員で身に付けたいものである。

関連リンク:後悔しないキャンピングカー選び

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第73回】安全性と断熱性を兼ね備えるアクリル2重窓


キャンピングカー、特にキャブコンバージョンのようにほぼ全体的に架装されているモデルでは、ガラスとアクリルの2タイプのウインドウが既製品として存在する。大雑把にみると、北米系モデルはガラスで欧州系がアクリルと分けられる。

それぞれの特徴は、ガラスは透明度の高さと平滑性の高さからくる見た目の歪みがないこと、素材としての長期にわたる不変性だ。アクリルはその素材が持つ強度の高さと割れた場合飛散しないこと、断熱性そのものがガラスよりも高いことである。

近年のモデルでは、ガラスでも一般家庭のような2重ガラスタイプが増え、断熱性が高いものも増えてきているが、フレームはアルミなどのままでありいまだ結露しやすいと言える。バンテックのキャブコンにおいては、ほぼ全てのモデルがアクリル2重窓を採用している。

これまで長い間一般的だったタイプは、アクリル板がもなか状に2重で貼り合わされていて、素材そのものの断熱性の高さだけでなく断熱層を設けることにより、さらに熱の伝わり方を防止しほとんど結露しないよう工夫されている。

現在人気があるのはウインドウが裏表逆になった様な構造で、外表面がボディ面とフラットな構成になるタイプ。それだけでだいぶ車がスタイリッシュに見える。

通常の利用において、室内外温度差による結露はほぼしないといっていいが、経年変化により2枚のアクリル成型板の接着が弱くなってしまったような場合、内側が湿気で曇ってしまうことがある。こうなってしまった場合はほとんど対応策がない。

アクリル2重窓の最大手というか、そのほとんどのシェアを持っているのがドメティック傘下のザイツという専業メーカーであり、エントランスドアなども手掛けている。安全性は十分考慮されていて、欧州の自動車用パーツの規格に合致しEマークが付いていて、これは乗車する車のウインドウとして利用できることを意味している。

現地説明を受けてみると、アクリルという素材のためその性能が問題なく発揮されるのは10年ほどで、それ以上の期間では紫外線の影響などにより多少の変形や白濁などが起こるという。

ただしメンテナンス方法もしっかり確立していて、それを行うかどうかでかなり差が出るとも。もちろん、バンテックではウインドウのメンテナンスというか研磨剤や補修パーツなども用意されているので、長い期間使用することは十分に可能だ。

アクリルウインドウは取り付けフレームがプラスチックで作られていることもあり、窓全体が外気による熱の伝わる影響を室内に出しにくい。さらに内側のフレームはケース内にロールシェードと網戸が内装され、ロールシェードは裏側がアルミシートの蒸着により赤外線の遮断を行ないより断熱性が高いものになっている。

さらに最近の傾向では、ロールではなくブラインドに見えるデザインのものが欧州では増えてきて、より断熱性と防音がしっかりとしてきている。構造は折りたたみ式の筒が繋がった状態で、そのシートもアルミを挟んだ多層構造で空気層を作り出すことによりそれを実現している。

このように、アクリル2重窓は今後も安全性と機能性の向上がまだまだ続けられる、キャンピングカーに適したパーツであると言えそうだ。

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主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第71回】Comfort & Safetyというボディの概念


キャブコンのようにキャンピングシェルを架装するスタイルには、現在大きく分けて2つの工法が採用される。バンテック社の場合は、継ぎ目のない一体成型FRP製ボディを採用している。この工法による利点は、衝突時の衝撃を拡散し乗員への影響を最小限に抑えること。また弾力性に富み、素材とコア構造による断熱性の高さも考慮されている。

もう1つはパネル工法と呼ばれ、アルミやFRPの表面材と内装材の間を断熱材と骨格で埋めた、高剛性で歪みが出にくいパネルを天井や床、壁面に使用して組み立てる工法がある。安全性は乗車する車にとって最も大事なことだが、FRP一体成型のデメリットも記しておくと、その形状を作り出すためにはある程度の材料の使用量が必要であり、その分重量がかさむという点があると一般的には言われている。

ではなぜ一体成型を採用するのか? 見た目のデザインの自由度の高さや日本における雨水侵入に対して強いなどのメリットもいろいろあるのだが、ちょっと例え話がズレるかもしれないが説明してみよう。

飛行機の世界で超初期のまだなかなか地上から人の足が浮き上らなかった時代、リリエンタールという人が鳥の構造を真似た羽根によってかなりいいところまでいっていた。ほぼ滑空していたその機体ではあるが、形状は鳥同様1枚羽根。当時の素材のことも原因ではあるものの、強度を確保することがなかなかできず、滑空中に折れて崩壊することも多くケガを負うこともあったようである。

これは機械と同様な高剛性的な考えで作られ、飛ぶためには軽量化が絶対条件でギリギリまで重量=材料=強度が削られ、羽根の骨部に応力が集中してしまいそれに耐えられなくなってしまった結果だが、そういった実験を検証して対応策を打ち出し大空に舞い上がった人がいた。それは言わずと知れたライト兄弟である。

彼らは自転車を作っていた経験から、柔構造を体感的に理解していて羽根を2枚にし間をフレームでつなぐことで、応力を全体が変形することで受け流すという2枚羽根を作り出したのだ。結果として外的要因、この場合大気という流体による入力が機体に生じても安定した機体形状が得られ動力機であるにもかかわらず崩壊することがなくなった。実際、実用レベルに達したと考えた兄弟は、その機体を世界に向かって発売を開始したくらいである。

柔構造によるFRP一体成型は、ボディ全体に応力を拡散して受け止めるという設計思想で作られているものであり、現代身近に目にするものとしてはクルーザー・ヨットがそれにあたる。300mを超える大型鋼板客船もそれに該当すると思われる。

要はキャブコンなどのサイズで柔構造で設計する場合の素材として、Fiber Reinforced Prastics(繊維強化プラスチック)が丁度良いという判断なのだ。

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主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第65回】すっかり定着してきた新型カムロードのおさらい


キャブコンのベース車両といえば、最有力なのがカムロードであることは周知の事実。実際、バンテックが製作する各モデルのほとんどがそれを採用している。’16年秋にそのベース車両がマイナーチェンジ以上のフルチェンジを行なったのだが、世の中にまだ普及が始まったばかりなのでその詳細を知る人は少ないのではないだろうか。

バンテック製キャンピングカー ZiL(ジル)バンテック製キャンピングカー ZiL(ジル)

誰しもが気づく大きな変更点はフロントマスクが変わったこと。細かく見てみると、プレスラインをうまく変更したりしているのだが、その印象はガラッと変化した。エンジンや足回りには変更が見られないが、これまでダイナトラック特設項目であったリヤダブルタイヤのナローボディ2形式が装備類もカムロードとして新たに加わった。

外観では、4WDマークは廃止され、エンブレムのフロントステッカーは貼られていない状態で出荷される。バンテック車両においては、統一の貼付位置を右上と決めたようである。これまで黒い帯状のものが存在していたものが消えメッキパーツが豊富になったこともあり、キャンピングシェルを搭載したときの雰囲気からトラックっぽさがかなりなくなり、あか抜けたイメージになったといえそうだ。

バンテック製キャンピングカー ZiL(ジル)バンテック製キャンピングカー ZiL(ジル)

バンパーの変更で、ボディラインから左右に張り出ていたエンド部分のチリが合わされた事により、キャブ周りのまとまり感が断然良くなったことが、細かいところであるが意外と重要かも知れない。乗用車的になったのだ。

バンテック製キャンピングカー ZiL(ジル)

運転席周りは一新している。ダッシュボード周りの張り出しが少なくなり、心なしかレッグスペースの拡大も見られるよう。またダッシュボード周りに収納量が増えたので、実用で色々助かるのではないだろうか。なかなか気付き難い所では、どうやらフロントウインドウやサイドウインドウがよりUV効果が強いものに変更になったようで、外から見るとこれまでよりだいぶ緑色に見える。運転中の光線が入り込むのが減少すれば長時間運転での目の疲労も軽減するし、エアコンの効きにも直接影響があるのでより快適になったと言える。

バンテック製キャンピングカー ZiL(ジル)

最も嬉しいのは助手席周りかも知れない。まず、運転席共々カップホルダーがダッシュボードに埋め込まれたことが大きい。また、テーブルとして使えるフラットで大きめな収納スペースが用意されたので、移動中の快適度が高まったのは間違いない。トラックベースだとどうしても助手席側がおざなりになる傾向があるので、こういった快適度が高まった変更は同乗者にとって嬉しいに違いない。

ガソリンエンジン車の最終減速比が変更になり燃費への影響がどう出るかは未知数だが、大容量オルタネーターや燃料タンクはそのまま継続。熟成度をさらに高め、これからのキャブコン市場をけん引していくのに十分の内容に昇華したと思える。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第63回】使いやすさとコストパフォーマンスを追求したコルド


クオリティとともにサイズアップが続くジル・シリーズ。それに対して以前から定番の2x5mサイズにこだわり新たなコンセプトを打ち立てているのが、コルドではないだろうか。

一番の特徴はエントランスを入った瞬間に理解できる。ステップから続くキッチン前のFRPパンはマルチルームにもつながっていて、ドレンホールが設けられているので、汚れても水洗いができる。

ペットを持つ人が注目しそうだが、土足のまま室内に入れるとかマルチルームにトイレを設置したとしてそれが利用できる、こういった実用性の高さに即反応できるユーザーも最近では多くなったのではないだろうか。

さらにエントランスを入って左、通常なら下駄箱など収納庫として処理するスペースの下部がくり抜かれているのは俊逸。この分だけ足先スペースが広がると、広いとは言い切れないエントランススペースでの昇降が格段に楽になるのである。

室内レイアウトは、コストパフォーマンスの追求からかデザイン・機構的にもシンプル極まりないが、そのおかげもあって操作方法は単純明快。ダイネットが掘りごたつ的に使えるなどは、まさに日本のファミリー利用条件でのリラックスを得るスタイルとしてピッタリ。

もし自分が1人でコルドを利用した場合、掘りごたつ状態で過ごし切れるので、バンクベッドもいらないかもとさえ思う。そうすれば、車両全高が抑えられ走行抵抗も減少し、安定性や燃費の向上にもつながると思うのだが、思考がニッチすぎるだろうか。

標準で用意されるバンクベッドも特徴的で、折りたたみのマットを広げるとツインタイプであり、マットのベースを極力薄く仕上げることでヘッドクリアランスをたっぷり確保している。また中央部が運転席横まで切れていることで、ベッドへの昇降がしやすくフロントシートからキャンピングシェル部への移動が、バンク部全体が就寝スペースになるモデルより格段に簡単である。

もう今やセパレートタイプのエアコンを装備することが、日本のモーターホームの必須条件になりつつあるが、コルドにおいてもそれは可能。最初から設計に組み込まれているので、配管が室内で見えてしまうこともなく、室外機の処理も十分配慮されている。

冷蔵庫やエアコンが必要な人用で選択項目であるのに対し、走行用燃料タンク周辺にまとわりつくような複雑な形状で作られた排水タンクは、使い勝手を十分に考えての装備と言える。

容量はほぼ50Lほどで、普通のキャンプ旅行で必要な容量を確保していると言える。キャンプ中大変なのはゴミ処理と汚水処理であり、帰宅時にそれがまとめてできるのであれば心配事から1つ解放されるのであるから。

世界を見渡しても、コルドのようなコンセプトを持つレイアウトデザインのキャブコンは見たことがなく、まさに日本のために作られた国産モーターホームといった趣きである。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com