【第65回】すっかり定着してきた新型カムロードのおさらい


キャブコンのベース車両といえば、最有力なのがカムロードであることは周知の事実。実際、バンテックが製作する各モデルのほとんどがそれを採用している。’16年秋にそのベース車両がマイナーチェンジ以上のフルチェンジを行なったのだが、世の中にまだ普及が始まったばかりなのでその詳細を知る人は少ないのではないだろうか。

バンテック製キャンピングカー ZiL(ジル)バンテック製キャンピングカー ZiL(ジル)

誰しもが気づく大きな変更点はフロントマスクが変わったこと。細かく見てみると、プレスラインをうまく変更したりしているのだが、その印象はガラッと変化した。エンジンや足回りには変更が見られないが、これまでダイナトラック特設項目であったリヤダブルタイヤのナローボディ2形式が装備類もカムロードとして新たに加わった。

外観では、4WDマークは廃止され、エンブレムのフロントステッカーは貼られていない状態で出荷される。バンテック車両においては、統一の貼付位置を右上と決めたようである。これまで黒い帯状のものが存在していたものが消えメッキパーツが豊富になったこともあり、キャンピングシェルを搭載したときの雰囲気からトラックっぽさがかなりなくなり、あか抜けたイメージになったといえそうだ。

バンテック製キャンピングカー ZiL(ジル)バンテック製キャンピングカー ZiL(ジル)

バンパーの変更で、ボディラインから左右に張り出ていたエンド部分のチリが合わされた事により、キャブ周りのまとまり感が断然良くなったことが、細かいところであるが意外と重要かも知れない。乗用車的になったのだ。

バンテック製キャンピングカー ZiL(ジル)

運転席周りは一新している。ダッシュボード周りの張り出しが少なくなり、心なしかレッグスペースの拡大も見られるよう。またダッシュボード周りに収納量が増えたので、実用で色々助かるのではないだろうか。なかなか気付き難い所では、どうやらフロントウインドウやサイドウインドウがよりUV効果が強いものに変更になったようで、外から見るとこれまでよりだいぶ緑色に見える。運転中の光線が入り込むのが減少すれば長時間運転での目の疲労も軽減するし、エアコンの効きにも直接影響があるのでより快適になったと言える。

バンテック製キャンピングカー ZiL(ジル)

最も嬉しいのは助手席周りかも知れない。まず、運転席共々カップホルダーがダッシュボードに埋め込まれたことが大きい。また、テーブルとして使えるフラットで大きめな収納スペースが用意されたので、移動中の快適度が高まったのは間違いない。トラックベースだとどうしても助手席側がおざなりになる傾向があるので、こういった快適度が高まった変更は同乗者にとって嬉しいに違いない。

ガソリンエンジン車の最終減速比が変更になり燃費への影響がどう出るかは未知数だが、大容量オルタネーターや燃料タンクはそのまま継続。熟成度をさらに高め、これからのキャブコン市場をけん引していくのに十分の内容に昇華したと思える。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第63回】使いやすさとコストパフォーマンスを追求したコルド


クオリティとともにサイズアップが続くジル・シリーズ。それに対して以前から定番の2x5mサイズにこだわり新たなコンセプトを打ち立てているのが、コルドではないだろうか。

一番の特徴はエントランスを入った瞬間に理解できる。ステップから続くキッチン前のFRPパンはマルチルームにもつながっていて、ドレンホールが設けられているので、汚れても水洗いができる。

ペットを持つ人が注目しそうだが、土足のまま室内に入れるとかマルチルームにトイレを設置したとしてそれが利用できる、こういった実用性の高さに即反応できるユーザーも最近では多くなったのではないだろうか。

さらにエントランスを入って左、通常なら下駄箱など収納庫として処理するスペースの下部がくり抜かれているのは俊逸。この分だけ足先スペースが広がると、広いとは言い切れないエントランススペースでの昇降が格段に楽になるのである。

室内レイアウトは、コストパフォーマンスの追求からかデザイン・機構的にもシンプル極まりないが、そのおかげもあって操作方法は単純明快。ダイネットが掘りごたつ的に使えるなどは、まさに日本のファミリー利用条件でのリラックスを得るスタイルとしてピッタリ。

もし自分が1人でコルドを利用した場合、掘りごたつ状態で過ごし切れるので、バンクベッドもいらないかもとさえ思う。そうすれば、車両全高が抑えられ走行抵抗も減少し、安定性や燃費の向上にもつながると思うのだが、思考がニッチすぎるだろうか。

標準で用意されるバンクベッドも特徴的で、折りたたみのマットを広げるとツインタイプであり、マットのベースを極力薄く仕上げることでヘッドクリアランスをたっぷり確保している。また中央部が運転席横まで切れていることで、ベッドへの昇降がしやすくフロントシートからキャンピングシェル部への移動が、バンク部全体が就寝スペースになるモデルより格段に簡単である。

もう今やセパレートタイプのエアコンを装備することが、日本のモーターホームの必須条件になりつつあるが、コルドにおいてもそれは可能。最初から設計に組み込まれているので、配管が室内で見えてしまうこともなく、室外機の処理も十分配慮されている。

冷蔵庫やエアコンが必要な人用で選択項目であるのに対し、走行用燃料タンク周辺にまとわりつくような複雑な形状で作られた排水タンクは、使い勝手を十分に考えての装備と言える。

容量はほぼ50Lほどで、普通のキャンプ旅行で必要な容量を確保していると言える。キャンプ中大変なのはゴミ処理と汚水処理であり、帰宅時にそれがまとめてできるのであれば心配事から1つ解放されるのであるから。

世界を見渡しても、コルドのようなコンセプトを持つレイアウトデザインのキャブコンは見たことがなく、まさに日本のために作られた国産モーターホームといった趣きである。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第61回】新しい日本のキャブコンレイアウト提案をしたジル・ノーブル


それまでキャブコンといえば2×5mのボディ寸法が定番だった。その理由として月極駐車場に入るサイズ、フェリーなどの乗船料金などがあげられていたが、本来のキャンピングカーとしての使い勝手に注目しコンセプトを再構築した。それは2年ほど前にさかのぼる。

新たなコンセプトは、さらなる快適で広い就寝スペースの確保とダイネットの構築による搭乗人数の確保である。そのままではこれらを満たすのは無理で、ベースになるカムロードを利用し最大となる5.2m全長を採用することに決定。その後登場するモデルは、基本的にこのサイズが基準になっている。

バンテック製キャンピングカー ZiL Noble(ジルノーブル) バンテック製キャンピングカー ZiL Noble(ジルノーブル)

何はともあれ、コンセプトを完遂するにはスペースを創出しなければならない。そこで目をつけたのが、キャブとシェルの段差部。通常ここは15cmほどあまり利用されない状態で放置されていることがほとんど。実際には、カムロードではリクライニング可能なスペースとなっている。

このスペースを有効活用し、スライドする新しい台座を設計しそこへシートを設置することで、ダイネットを形成することを可能にしたのだ。それらスライド操作などを行なうときフロントシート背もたれも操作する必要があるが、シェル側からそれができるようにするためのケーブルが増設され、簡単に作業できるよう工夫されている。

バンテック製キャンピングカー ZiL Noble(ジルノーブル) バンテック製キャンピングカー ZiL Noble(ジルノーブル)

ダイネットが全体で20cmほど前方へ移動、それとともに後方が20cm拡大したことにより、最後部にダブルベッドを設置することができた。狭さを感じずにすむ2段ベッドではなく、3段階にスプリングの反発力を調節できるマットを入れ、寝る方向で2つに分割されているおかげで、隣で寝ている人の寝返りが直接伝わらないようにも工夫した。

さらに、上段がない分少しマットの高さを上げ下部外部収納庫スペースを大幅拡大。セパレートエアコンの室外機も問題なく収納できるようにし、昇降性を確保するため、格納式スライドステップを用意し、移動時の安全性も確保した。

バンテック製キャンピングカー ZiL Noble(ジルノーブル)

その就寝スペースには、今やバンテック車には当たり前になりつつあるセパレートエアコンの室内機が装備され、サブバッテリーで4時間程度は駆動できるように。もちろん出力的に、フロントのバンクベッドの空間まで調節できる能力があるが、例えばこのリヤ空間だけをカーテンで仕切って空間容積を減少させれば、その運用エネルギーは減少しサブバッテリーへの負担も激的に軽減させることができるだろう。

装備類はジル・シリーズ同様のフル装備状態で、それら使い勝手は変わらないし最新型パーツの恩恵を感受できる。ただ実際には2人で利用することがほとんどというユーザー層には、ファミリーにも余裕で対応できるこの新しいコンセプトによるレイアウトは、まだ一般的にはあまり浸透していないもののかなり魅力的に映るのではないだろうか。

ショーなどで普通の2段ベッド仕様などと比較することができる場合、可能ならばこのリヤベッドに少し横になってみることを勧める。たったそれだけで、レイアウトの持つコンセプトが理解できるはずだから。

バンテック製キャンピングカー ZiL Noble(ジルノーブル)詳細ページ

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第59回】スーパーロングベースのラグジュアリートランポを目指したフレア


バンテックは、創業当時こそバンコンメーカーだったが、フレアが登場した’08年には押しも押されぬキャブコンのトップメーカーになっていた。そんな状況で、優れたベース車両として登場してきたハイエース・スーパーロングの特装ベース車を、ラインナップに加える試みがd-boxと同様に行われたが、それほど長続きはせず、現在では残念ながらラインナップから消えている。

バンテック製キャンピングカー FLARE(フレア)

レイアウト的には極めてシンプルで、前後に向くセカンドシートの後ろには折り畳みのできる巨大なソファベッドを設置し、キャンプ等で必要になるキャビネット型の収納兼キッチンカウンターを設けた。

バンテック製キャンピングカー FLARE(フレア)

丸みを帯びた座面のソファを跳ね上げると、広々としたトランポスペースが生み出されるものの、アンカー設備などが設置されているわけではなく、床張りも含めあくまでキャンパー的な作りに徹している。ソファベッドをベッド展開して常設ベッドのように利用するのも簡単だった。

ただこのコンセプトが、今一つユーザー層にアピールしきれなかった。便利なのだがトランポともキャンパーともどっち付かずだったのかもしれない。

バンテック製キャンピングカー FLARE(フレア)

実際、余裕ある室内容積に任せて人気のある多人数乗車定員を確保したいなら、ダイネットを形成するために折りたたみのシートをわざわざ作る必要もなかっただろう。こうしたのは、セカンドシートから後ろのカーゴスペースをたっぷり用意したかったからに他ならないのだ。

確かになんでも要求を満たしきる構成は難しいに決まっているのだが、定番の二の字レイアウトをスーパーロングボディで実現したd-box、標準ロングでポップアップを装備するマヨルカなどと比較すると、コンセプトは理解できてもアピール度が低い。できあがりのクオリティが確保されているので、ユーザー層はもっと多機能を欲しがる傾向があったのかもしれない。

正直に言えば、このカーゴスペースを十分使いこなすだけの遊びや方法を知っていて、乗車定員をそれほど普段必要とすることなく、なおかつスーパーロングの大きなボディサイズを日常で取り回せるユーザー層というものが、今一つ日本では成熟していなかっただけなのかもしれない。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第57回】時代の欲求、愛犬とともにランディで快適なキャンプ旅



キャンピングカーを旅車として選択するユーザーにおいて顕著なのが、ペット同伴の移動をメインに据えその所有率が通常の車より高いことが挙げられる。特に中型犬以上のワンちゃん連れのご家族は驚くべき頻度である。

もちろんそれは“家族”であることも重要なのだが、自由な時間に一緒に旅できることや、ペット同伴による宿泊に自由度が少ない日本の環境が影響していることは間違いないだろう。さらに時代が進み、国産のモーターホーム系が停車時にもエアコンが使えるようになってきた意味合いは、ある意味絶対条件になりつつあるのかもしれない。

バンテック製キャンピングカー CORDE RUNDY(コルド ランディ)

そんな事情が影響してか、バンテックにかなり特異なレイアウトと装備内容で登場して来たのがランディ。正直言えば大ヒットモデルというわけではないが、見る人が見れば“ウゥ~ン”と唸らせる内容がてんこ盛り。

それを実現するため、乗車定員は6名ながら、レイアウトはまるで2人で使用することが前提になっているような趣き。移動時はフロントシート、くつろいでいるときは車両後ろ半分が丸々ラウンジ型ダイニングという大胆なもの。

バンテック製キャンピングカー CORDE RUNDY(コルド ランディ)

フロントシート上にあるバンクベッドは、通常とはかなり違う折りたたみ式ツインベッド仕様。横に寝ている人に気を使うことが少なく、フロントシートからマルチルームやリヤダイニングスペースへの移動がすこぶる楽な移動になるよう設計されている。

バンテック製キャンピングカー CORDE RUNDY(コルド ランディ)

今やペット連れキャンピングカーの定番となりつつあるセパレートエアコンを装備し、移動の食事や休憩時にサブバッテリーでエアコンを3時間以上駆動することができるので、安心して車内に置いていけるのもありがたい機能なはずだ。

また、このエアコンの下スペースは一段高い設定になっていて、キャブとシェルの高さ段差をかなりの床面積で吸収している。その横側面下部にはウインドウが付き、ワンちゃんが外を眺めていられるという嬉しい特典付き。さらにそのスペースは、ちょうどワンちゃんが移動中に中央から前を見るのにいい位置になっているのも見逃せない。

バンテック製キャンピングカー CORDE RUNDY(コルド ランディ)

特筆すべきは、エントランスを開けた目の前のフロアが、マルチルームまでつながる一体型シャワーパン構造になっていて、“土間”と呼ばれるそのスペースのおかげで、散歩から帰ってきてもそのまま上がれるし、靴も履いたままで大丈夫。もちろん水洗いで流せるドレンを装備しているので、通常の使い勝手をスポイルすることがないどころか利便性は高まっていると言える。

万人の目的の最大公約数ではなく、使う目的者のニーズをきっちり拾い上げる、そんなモーターホームがワンオフモデルではなくカタログモデルとして登場してきた意味合いは、ある意味日本のモーターホーム市場の成熟度が高まって来たことを意味しているようだ。

バンテック製キャンピングカー CORDE RUNDY(コルドランディ)

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com