【第55回】ルネッタは軽キャンパーの新たなる潮流


ルネッタ”の登場は衝撃的だった。なにしろ、キャンピングカーショーに登場した途端、いきなりネットニュースのトップになったのだ。キャンピングカーにおいて、こんなに注目されたことはこれまでにない。

バンテック キャンピングカー 軽キャンパー・ルネッタ(Lunetta)

そんな状況を生み出したのは、大人気の軽キャンパーというカテゴリーにおいて、他モデルとはまったく違うクオリティで製作されたモデルであることが大きい。その仕上がりは、いってみればモーターホームのそれなのだ。

バンテック キャンピングカー 軽キャンパー・ルネッタ(Lunetta)

室内に目をやるとそこにあるのは、国産キャブコンやフルコンでも滅多にお目にかかることができないプルダウンベッドが付いているのである。もちろんバンテックオリジナルで、ルネッタ専用に設計されているもの。

この装備があれば、決して広いとは言えない軽自動車の容積でも、大人が複数で快適に就寝できるのである。

バンテック キャンピングカー 軽キャンパー・ルネッタ(Lunetta)

装備だけでなく、家具の仕上がりにもこだわっている。間に合わせで作ったというものではなく、職人泣かせのかなり凝った造形を持たせているのだ。ギリギリまで寸法を切り詰められたそのなかに、ランク上の1ボックスキャンパー同等の設備を搭載する。

さらに軽だからといって小型タイプを採用するわけではなく、1ボックスキャンパーと同様なバッテリーや給水システムを諦めていない。これによる実用性の向上は言わずもがなである。

バンテック キャンピングカー 軽キャンパー・ルネッタ(Lunetta)

現代の車らしく、電気まわりも充実している。サブバッテリーが大きめのものがあるからこそ可能なことだが、いまどきの使いやすさを追求した形になっているのである。

車そのものが売れない現代の日本において、軽自動車がファーストカーとしての地位をしっかり築き始めている。そのような背景を持っているから、ルネッタのような本物のクオリティで勝負をかける軽キャンパーの存在も注目を浴びるのだろう。

バンテック製キャンピングカー「軽キャンパー・ルネッタ(Lunetta)」の詳細ページ

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第53回】世界に通用する本格モーターホームを目指すVEGA


‘08年登場のベガは、コーチビルドをする適切なベース車両が存在しない日本において、乗用で設計されているマイクロバスをボディカットすることにより、世界に通用するパッケージで登場させることを目的としていた。

それまでのキャブコンのほとんどが採用するトラックベースのモデルとは異なり、ロングホイールベースでリヤダブルタイヤがもたらす乗り心地の良さは、最先端の装備群と合わせまさにフラッグシップの様相。

バンテック キャンピングカー Vega(ベガ)

FRPキャンピングシェルを載せ拡張された室内は、ベースのコースターとは隔絶した本格的モーターホームの広さと優雅さを持つ。どこの寸法採りにも、無理をして入れ込むということがないのでゆったり感がありリラックスできる。

エントランスドアや、照明、そのほか装備も最新のものがふんだんに取り入れられ、それまでのベガと時代が一気に変わったイメージを持たされている。

バンテック キャンピングカー Vega(ベガ)

世界に通用するイメージでわかりやすいのが、キッチンカウンターの広さ。一応あるというレベルではなく、毎日そして何年でもそこで暮らすことが当然の装備と大きさを標準としているのだ。それはレジャーのためではなく、生活するのが当たり前というそれまでの国産キャンパーにはなかなか体現できなかったコンセプトを埋め込んでいることにほかならない。

バンテック キャンピングカー Vega(ベガ)

マイクロバスベースとなると、スペースの関係からどうしてもトイレ&シャワースペースがサイズ的に追い込まれる。ところが新生ベガではそのデメリットを克服し、生活する空間におけるトイレ&シャワースペースを確保していることも大事な要素と言えた。

バンテック キャンピングカー Vega(ベガ) バンテック キャンピングカー Vega(ベガ)

もっとも、リヤに位置するベッドルームは基本ツインタイプで、2人仕様として考えられているのも本来のモーターホームらしさの追求だった。ただし、ベッドはいつでもスペーサーでフラットに変更できるし、当時バンテックが構築したシステムにより家庭用セパレートエアコンを埋め込むなどの、特徴的な部分も惜しみ無く投入されている。

贅を尽くしたこのベガ、欲するユーザー数は多かったのだが生産に非常に時間がかかるというのが最大の難点であった。そのため限られた数だけが世に出荷されたが、それらモデルは現在でも皆大事に乗られているようである。

ベースのコースターも新型になり、安全基準の問題でほぼボディカットして作り込むことに意味がなくなりつつあるなか、新たに登場してくるフィアット・デュカトにも興味を示しているバンテック。デリバリーが始まって安定供給されたあかつきには、さらに魅力的な内容になった新型ベガが、デュカトベースで登場してくる可能性はもしかしたらあるのかもしれない。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第51回】新型シーダの原型とも言えるアトム最終型


‘00年に初代が登場し、’08年に5代目、SRXタイプも勘定すれば6代目となるアトムの最終型は型番が307となり、タイプRというモデルが登場した。レイアウトプランや装備がめまぐるしく変化したモデルではあるが、ある意味タイプRが集大成ともいえる。

キャンピングシェルは“シーダ”と酷似していて、現在見てもそれほどの時代格差は感じられない。間違いなく原型と言っていいだろう。しかしその内容は、シーダとは一線を画すコンセプトを持っていたモデルである。

バンテック キャンピングカー ATOM(アトム)307R

基本的にファミリータイプであるため、乗車定員と就寝定員をたっぷりとるというコンセプトがあり、ジル譲りの広いラウンジを作れる左ダイネット空間を持つのが最大の特徴。ただ、ボディサイズ的にマルチルームを設けるなどは用意していない。

そのためトイレは常設ではなく、徹底して居住空間部分に余裕を持たせるレイアウトになっている。テーブルの広さはボディサイズからは想像できないもので、このあたりは格上の空間演出を行なっているのが理解できる。ソファ背もたれも使い、通路を埋めるように設置し多人数がゆっくりくつろげるのは、ファミリーには重宝するだろう。

バンテック キャンピングカー ATOM(アトム)307R

ダイネットとバンクベッドに思い切って空間を割いたキャンピングシェルのため、当然寸法的に無理が生じる。その典型がキッチンスペースであり、カウンタートップの下が空間処理を行うなどしスペースを稼ぐ苦肉の策も取り入られた。

実際にこのキッチンの前に立ってみると、ダイネットまでの距離も考えられていて使い勝手がいい。ただし収納スペースということでは、やはり物足りなさを感じてしまうのは事実である。

バンテック キャンピングカー ATOM(アトム)307R

一番“らしさ”を主張しているのはリヤに設置されたクローゼット。このクローゼットは前後にスライド伸長する特殊な作りで、伸ばした状態でポータブルトイレを設置し利用することができるが、かなり苦労したギミックのようだ。フルベッドの状態でもその利用が可能なのは、よく煮詰められた設計だと感心したものである。

実は、この折りたたみトイレスペースは、機構こそ違うものの現在のシーダにも受け継がれ、大きなキャビネットスペースにポータブルトイレを収納している。ライトキャブコンという限られた空間ではあっても、やはりトイレがあったほうがキャンピングカーとして有利であるということを理解し、設計に取り込まれたはずである。

現在でもこのカテゴリーのライトキャブコンモデルの人気は高く、中古市場でも売れ筋の商品。いろんな意味で、日本の環境にあった使い勝手のいいキャンピングカーと言えるのだろう。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第49回】ナローボディの使いやすさにこだわるマヨルカ


バンコンビルダーとしてスタートしたバンテック。当時はハイルーフ、超ハイルーフ、ポップアップとスタイルが豊富で、さらにボディサイズも各種1ボックスベースで取り揃えていた。それらは本格的にキャブコン製作をしていくなかで姿を消していったが、そんななか、最後まで人気のあったマヨルカは現代まで継続する車種となり、完成度の高さとともにその存在理由を明確にしている。それは日常における使いやすさの追求である。

バンテック キャンピングカー バンコン Mallorca(マヨルカ)

とにかく、標準ロングというサイズにこだわり、ルーフ加工しても車高にこだわり、外観サイズと裏腹に室内空間は容積を増やそうとしている。そのためポップアップルーフの大きさは車体サイズに対してかなり大きく、持ち上げた時の高さもしっかりとってルーフベッドのヘッドクリアランスもたっぷりだ。

レイアウト的には平均的なサイドカウンターなのだが、シートレイアウトとリヤのベッドになる部分を徹底的に吟味し、フロア一面がベッド展開でき、使い勝手は間違いなくファミリーユースを考慮している。

乗ってみるとわかるのだが、3列シートの余裕のある座り心地と手荷物の収納力の高さは、ナローボディとは思えないほどの余裕を感じられる。

バンテック キャンピングカー バンコン Mallorca(マヨルカ)

マヨルカで感心するのは、各部の変形やセッティングをする時の扱いやすさが際立っていること。特にリヤトランクスペースを形成するマットと台座は、このモデル専用に製作される金属パーツの骨を使っているため、無駄がなく実に動きがスムーズだ。多種多様なモデル展開をせず、1モデルに絞ったからこそ実現できた特別な組み立てなのかもしれない。

見た目はシンプルなれど、1ボックスだからこの程度というような妥協がないモデルであり、作り手が徹底的にこだわったところが随所に見受けられる。ただそれを強くは主張していない、さらっと流してユーザーに寄り添う感じがマヨルカの本領なのだろう。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第47回】全長5mの可能性に挑むコルドバンクス


JB-500に始まるバンテックのコーチビルドキャブコンの歴史は、ジルに引き継がれ、さらに大型化を果たし豪華さも併せ持つモデルへと継続していく。

そんな中、装備はしっかりとしていながらリーズナブルで使いやすいスタンダードモデルの模索が始まる。そして生まれたのが’05年登場のコルドバンクスだ。

バンテック キャンピングカー CORDE BUNKS(コルドバンクス)

機能的には十分でスッキリとして使い易い印象。レイアウトはリヤ常設2段ベッドを持ち、標準的なダイネットを用意する極めて一般的なレイアウトを採用している。この使いやすさは言わずもがなだが、全長5mのキャブコンにあってユーザーのニーズを満たす最大公約数的な作りだったのだろう。

装備についても現在へ続く要素が多く、発電機を搭載できるようにしたり、LPガスの使用を限定し少量のカセットガスによる供給に絞ったりしている。’05年当時はソーラーパネルがまだまだ高価で、サブバッテリーと組み合わせたシステムを構築するより発電機単体の方が安かった、照明を代表とする装備品の電気消費量がまだまだウェートとして大きかった時代でもあった。

バンテック キャンピングカー CORDE BUNKS(コルドバンクス)

ダイネットのほかに、サイドシートがありさらにそれがエントランス前に拡張できるという機構がある。これは、室内でより多くの人数でくつろげるようにする工夫だが、コルドバンクスに限らず全長が限られたモデルでは現在でもこぞって組み込まれる仕組みだ。

バンテック キャンピングカー CORDE BUNKS(コルドバンクス)

収納に関しても気を遣った設計がなされていて、大型バゲッジドアを用意しリヤベッド部を収納庫として利用できるほか、アンダースカート部にも大型ストレージを用意するなど、より多様化するキャンプシーンに対応しようとする工夫が随所に盛り込まれている。

現代の5mスタンダードキャブコンとしては当たり前に思われる内容だが、コルドバンクスが登場した時には割り切り方といい、かなり斬新な構成であったことは間違いない。実際、このコンセプトからの派生モデルが、次の時代に続々と登場してくるのだから。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com