【第45回】現在の基本形となったNewジェネレーション誕生


’04年に新型ZiLが登場し、その後に発表されたジル520。外観的には、ボディ寸法を延ばしたことにより、余裕のある室内空間を作り出したことが目新しい。そして、今思えばありとあらゆるメーカーが追随することとなった、それまでにない画期的な装備が搭載された。

バンテック キャンピングカー ZiL520

室内レイアウトは、定番のリヤ常設2段ベッド仕様と特別目立つものではなかったが、エントランスドア上にそれまでには考えられないものが取り付けられている。外から見るとエントランスドア横に通常のキャンピングカーにはないルーバー窓があり、それが家庭用セパレートエアコンであることが理解できる。

バンテック キャンピングカー ZiL520

そもそもバンテックのキャブコンは、走行時エンジン出力を使ったリヤエアコンを装備していた。通称ユニクラと呼ばれるそれは、車として理にかなってはいたが故障率の多さ、エアコンガスの抜けが問題となっていた。

ちょうどその頃、家庭用セパレートエアコンは現在に続く省エネルギー化をはたした時期で、暖房も含めて利用できないかとバンテック社内で長らく研究と実験を繰り返していた。結果、走行時の発電量で十分対応でき、さらに停車時はサブバッテリーからインバーター駆動するシステムを構築することができたのである。

バンテック キャンピングカー ZiL520

蓄えた電力でエアコンを4時間使えるようにするため、サブバッテリーはこれまでにない3本という大容量を確保。これにより、それまでのように電気を使うために発電機を持ち歩くということが必要なくなったように思われる。

停車中にもエアコンが使えることで、新たな顧客も生まれた。それはペットを同伴するユーザーであり、真夏にサービスエリアなどで食事休憩するときも安心でき、その活用法が単なるキャンプでの快適性の追求にとどまらないレベルに達したのである。

今でこそ当たり前に思われている装備になってきたものの、当初はガソリンエンジンモデルでは発電量が足りないのでオルタネーター容量を上げなければならないなど問題もあった。

現在のエアコンを含めた電化生活による快適な車内空間、その中心にいたのがジル520なのである。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第43回】2004年 バンテックの看板モデル 4世代目のフルチェンジ


'04年、バンテックの定番モデルであるジルがフルモデルチェンジし、新しいキャンピングシェルデザインになった。このデザインは、その後登場するバンテック製キャブコンの統一イメージともいえる感じになった。

バンテック キャンピングカー ZiL4

室内は、新しい家具の作り方を採用してはいるものの、レイアウトは初代から続くコンセプトを継承。左ダイネット空間と大きなラウンジは広々とした室内を演出している。今思えば、全長5mに収めた最後のモデルとなるが、使いやすさも含め秀逸であることを実感する。

バンテック キャンピングカー ZiL4

装備については、ジルらしくフル装備。トイレや温水シャワーまである。初代ジルが登場したとき、“幕の内弁当”のような装備とよく言われていたが、それは最初からすべてを備えた過不足のないものという意味で使われていた。

バンテック キャンピングカー ZiL4

現代のモデルと違うのが、ダイネットを形成するセカンドシート下。当時は左右貫通式の外部収納庫として利用でき、フロア下のサイドストレージボックスと合わせ圧倒的な収納力をウリにしていた。

現在では、このスペースには重量のあるサブバッテリー×3本などが積載されている。もちろん車全体の重量配分を考えた結果の配置だが、当時のキャンピングカーでは現代ほど電気への依存が高くなかった。というより、エンジン停止中にセパレートエアコンを動かすといったようなシチュエーションが想像すらされていなかったのである。

バンテック キャンピングカー ZiL4

リヤには、メインフレーム間の空間を利用したスライドストレージや、発電機収納ボックスを設置するなど新しいアプローチがみられ、現代ではあまりに当たり前の装備になっている。

この4代目のジル以後、ジルをベースにさまざまなトライモデルがメーカー内で進行する。そこで生まれた技術は実験検証を終えた上で続々と商品化。新たなモデルが登場するきっかけになっていく。

そしてこのモデルそのものが完成していたことは、10年以上経過した現在の感覚で見てもまったく古びていないことからも十分確認できるのだ。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第41回】スーパーロングベースのd-box投入


バンテックといえば“キャブコンメーカー”というイメージが強いが、現行ラインナップの中にも標準ボディポップアップタイプのバンコンと軽自動車ベース合計3車種がラインナップされている。

’09年に登場したディーボックスはそんななかにあっても、かなり異色な存在。名称中のdは、Dream Camperの頭文字だったはずである。

現行1ボックス車がボディをいじったり、軽初のプルダウンベッドだっとりとかなり意欲的な試みをしているのに対し、極めてオーソドックスなレイアウトを採用していたことで逆に目立つモデルだった。もしかしたら、リーマンショック直後の時代背景も影響していたのかもしれない。

バンテック キャンピングカー d-box

セカンドシートは前向き乗車で3点シートベルト対応とし、2脚用意されたサードシートと対面させダイネットを形成する昔ながらのレイアウト。その後方にキッチンやトランクスペースを設けるという、極々普通で定石のようなパッケージで特徴を打ち出してくるということがなかった。

バンテック キャンピングカー d-box

「自作もできる」をモデルの合言葉にしていたので装備は限られていたが、広いキッチンスペースやスライド収納棚など使い勝手に気を使っているところは、いかにもバンテックらしさがにじみ出ていた部分だろうか。このあたりのイメージは、現行の標準ボディ・マヨルカにも通じるものがあるように思われる。価格は2WDガソリン車で378万円(税込)に抑えられている。

天井高のしっかりあるハイエース・スーパーロングがベースだけに、端的にいえば使いやすさという点ではなんら問題になることはなく、そのシンプルさが使いやすさにもつながっていたはずではある。

バンテック キャンピングカー d-box

リヤユーティリティスペース上にセットできるベッドと合わせ、就寝可能人数もたっぷり。ベッドにオリジナルの脱落防止柵が付き、その後ろがさらに高さが取れる収納スペースに割かれているあたりが、もしかしたらモデルの特徴的な部分かもしれない。

この当時以降世間では、スーパーロングの大容積をウインドウ加工などでさらに拡大し、モーターホーム的な仕上がりになっていったモデルが多い中、その大容積を十分利用しやすいシンプルレイアウトであった。もしかしたら、現代の方がこういったモデルが望まれるのかもしれないが、やはりユーザー層はよりモーターホーム的な方に目がいってしまうのだろうなと感じてしまうモデルであった。というより、それがバンテックに持たれているイメージなのだろう。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第39回】フラッグシップモデルを目指した新型ベガ


キャンピングカービルダーの先進国である欧米に、追い着け追い越せという気概を持っているのが分かるのが、大型モーターホームの開発を常に続けていることだ。それはいわゆる“売れ線”ではなく、持てる技術力をフル活用した意欲作とでも言えばいいだろうか。

’05年に新型になったベガは、ちょっとキャンプに出かけるというレベルではなく、住むことを前提にした大型タイプであり、装備は満載され、最も重要視しているのが快適性だ。

バンテック キャンピングカー VEGA(ベガ)

日本全国で安心して乗れるという意味もあり、ベース車両には国産マイクロバスでリヤダブルタイヤのコースターを採用。ベース車両の限られた室内幅を打開するため、大胆なボディカットが行われキャブコンバージョンにして居住空間を拡大した。本当ならフロントフェイスごとデザインし、フルコンバージョンとしたかったところだろうが、安全基準やその加工の困難さを秤にかけると、メリットが少ないと判断したのだろう。

室内は、当時流行だったとも言えるシックなカラーの木目調。それに合わせたシート生地類でまとめあげ、天井には現代の間接照明につながる造形が施されている。この形状には配線類を見えなく通すという機能も持たされていた。

バンテック キャンピングカー VEGA(ベガ)

最後部には常設のダブルベッドが用意され、欧米モデルに匹敵する快適空間をもたらした。ベースがマイクロバスであることで、日本のあらゆる地域の道路に対応できる取り回し性の良さも持ち合わせ、予算が合えば手に入れたかったユーザー層もかなりいたはずである。

バンテック キャンピングカー VEGA(ベガ)

車両・室内サイズに余裕があり、もちろん天井高もゆったりしキッチンスペースも広大。シャワー&トイレルームの充実度も見逃せない。こういった総合的な要素の積み重ねが、住むためのモーターホームであることを可能にしている。

当時かなり注目されたモデルではあったのだが、販売的には成功とは言えなかった。なぜなら、あまりに手間がかかるので採算ベースに乗せるのが大変で、ベース車両が工場に入ってから完成までの日程がかかりすぎる。そんな理由から、現在は生産を中断している。手放す人が少なく、中古で出てくることはほとんどないのだが、万が一見つけた場合はかなりお買い得感のあるモデルのひとつと言って間違いない。

もちろんバンテックが、このサイズのモーターホーム製造を狙っていることは間違いなく、今後、何かしらのアクションはあろうかと思われる。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com

【第37回】新型カムロードも早々にデリバリー開始した山形工場


連載第35回で落成した工場をざっと紹介したが、今回はその中身について。とにかく中に入ると広く、日本のビルダーで国内最大をうたうだけのことはある。しかも落成時には、すでに生産計画によるライン生産が開始され、製造担当者はてんてこ舞い状態だった。何しろ、一気に生産量を増やす計画だからである。この写真は、工場を入って南側というか右ウイング側に立ったもので、通路一番奥に見える北側壁にベース車両等搬入口がある。

バンテック山形工場バンテック山形工場

まず搬入口を入ると、ラインの右側にタイ工場で製造されたキャンピングシェル部分がズラッと並んでいる。かなりのところまで仕上げられていて、あとはシェルを積載し外装パーツと内部装備艤装を待つだけと行った状態。積載前には入念なチェックがされて、必要な部分には調整も行われる。

バンテック山形工場

キャンピングシェルはタイ工場からコンテナ積みで日本に届くが、それをコンテナから抜き出し、さらにベース車両に載せる作業をするのに必要な移動式専用ジグ。これはバンテックで製作した特工で、細かい作業に適した手動式。実は今回落成した新工場のそばにあった前工場で使用していたものだが、バラすことなく職員で道路をなんとか移動させてきたというエピソードがある。

バンテック山形工場

完成シェル置き場・積載作業場の向かいには、バンテックが製造する車両が丸々入る塗装ブースが完成直前であった。すでに機器類は設置が済んでいて、あとは換気ダクト関連を設置するだけ。

この横に電源、金属加工場が並び、さらに奥に木工作業場と樹脂成型場が続くが、こちらはまだ発注した3D・NC旋盤がまだ来ていなかったりで未完成。

これらの関連作業場の完備具合と、キャンピングシェルはほとんどできあがっている状態で国内に入ってきていることを考え合わせると、今後は一般的なキャブコンだけでなく、違った用途の車両なども手がけるのではないだろうか。その機能は十分に存在していると確信する。

バンテック山形工場バンテック山形工場

ベース車両にキャンピングシェルが載せられると、次に向かうのは艤装を行うエリア。ここは出口に向かって作業がおこなわれるいわゆるライン状態で作業が進んでいく。下回り、室内装備品装着、窓などの外装パーツ装着といった具合。

「ユーザーが一番見たいのはもしかしたらここかも」と思われる場所で、壁内配線の取り回しやシェル構造、装備類の効率的な取り付け方法など、ちょっと知っている人なら1日見ていても興味は尽きないはずだ。

バンテック山形工場

外装やメーカーオプション類が装着されれば完成検査。どの位置もしっかり目視できるよう専用の可動式足場で囲み、徹底的にチェックされる。もちろん小さな傷でも見つけたらきちんとタッチアップし、国産車ならではの高いクオリティを維持する。その作業はルーフ上の普段目につかないところにまで徹底していた。

バンテック山形工場

最初の写真と反対側、車両搬入口方面から艤装エリアを望む。この最も奥の方、建物南東方向に大型シャッターがあり、ここから完成車両は巣立っていく。実はこのライン、工場内だけでなく車両搬入口の前に車両の入れ替えもスムーズにできる巨大なベース車両ストックヤードがあり、完成車搬出口すぐの場所にも、一時保管エリアが広大に用意されている。

誰が見ても製造ラインであるというエリアのほか、裏になるスペースもかなり用意されているのが新工場の面白いところかも。

倉庫だったり検査ができそうな部屋だったり、職員休憩所も用意されているし、パーツなどの移動で使うであろう裏の通路も広く段差がない。本格的な生産が始まったときに、こういったものが活きてくるに違いない。

入庫から出庫まで可能な限り車両を動かさずに完成できる生産ラインになっていて、バンテックの山形工場としては3代目だが、その生産効率と広さ、清潔な環境はこれまでとは比較にならないレベルで圧倒的。メーカーの勢いというか、意気込みを感じずにはいられない。

TAMA@MAC
著者:TAMA@MAC
主に月刊オートキャンパーに執筆し、超小型キャンピングトレーラーを引っ張って、キャンピングカーの可能性を甘受する日々を送る。クルマやキャンピングカーは相当好きだが、最近はフィールドワークにドップリはまり込んでいる。 http://www.tamamac.com